第12話 不穏な気配

「アル君、アレなにかな?」


「どれどれ」


 落ちている黄色く輝く石を拾い上げてみる。


 帯電しているようで、少しピリピリする。


「とりあえず、持って帰ろう」


 電気石ってやつかもしれない。


 いつの間にか左腰にある小型のバッグに入れておこう。


「あれ? 中がやたら広い?」


「どしたの、アル君?」


 アスカは僕の顔を覗き込んでくる。


「なんか、いくらでも入りそうなんだ」


「ホント? アル君、すご~い!」


「僕がすごいわけでは……いや、仮に僕が生成したアイテムなら僕の力と言える……のか?」


 なんか、釈然としない気がするが、まあ良いか。


 ──これは多分、いわゆるストレージってやつかもしれない。


 よくネットで小説を見ていたことがあるが、大半の主人公は物をたくさん持ち運べる道具や能力を持っていた気がする。


「物を創り出すのが、アル君の力なのかな……?」


「だとしたら、ありがたいな」


 これからも便利なアイテムが生成されるかもと思うとワクワクする。


 原理が全く分からないのが気にはなるけど。


「アル君、そういえば鉄砲や剣の名前って何て言うの?」


「え?」


 確かに名前が無いのは不便だ。


 僕は思い付きのままに名前をつける。


「剣はゼロキャリバー、銃はカオスマグナムってとこかな」


「カッコ良い! アル君ってセンスあるよね」


「そ、そうかい?」


 褒められて有頂天になってしまう。


 ──僕とアスカは卓也さんたちの元に戻ることにした。


 道中、2首もある大きな犬や人のサイズもあるカマキリが襲ってきた。


「メーターのランプが光ってる」


 カオスマグナムを撃ち尽くした際はランプは消えていた。


 もしかして、また撃てるのか?


 口を開けて襲ってくる2首の犬とカマキリにマグナムを向けて引き金を引いてみる。


 大砲並みの轟音が響くのと同時に犬とカマキリは木っ端微塵になる。


「おお! 時間経過で弾は回復するみたいだな」


「アル君、どんどん強くなるね~」


「フッ、僕の進化は止まらないさ」


 気取って気分を盛り上げてみる。


 カオスマグナムは最後の1発の威力が数倍になる性質のようで、撃ち尽くした際のリチャージは3分ほどかかるみたいだ。


 あと、僕が生成したと思われる剣や銃、服などは破壊不能の性質を有しているみたいで、どんな扱い方をしても壊れる気配が無い。


「まさに敵なしって感じだな」


「だねっ♪」


 アスカは安心しきったように僕にベッタリとしがみつく。


 ──調子に乗ってみてはいるが、やはり奥底の不安は消えないか。


 いつ、何かの拍子に失うかもしれない。


 卓也さんが、何らかの情報を持ってきてくれればありがたいんだけど。


 拠点に帰り着くと、なにやら騒がしかった。


「ちくしょう! アイツら! もう許せねぇ! 戦いましょう!」


「駄目じゃ! 無駄死にするだけじゃぞ!」


「でも、だからって! こんな横暴!」


 初老の老人に諭され、男性は悔しそうに拳を握りしめる。


 その中には卓也さんもおり、辛そうに声を絞り出している。


「奴らは、戦車を持っている。どう足掻いても俺たちに勝ち目は無い……」


「せ、戦車!?」


「おとぎ話で聞かされた……あの、大崩壊前の兵器を!?」


 驚きと絶望が漂う中、僕は卓也さんに向かって歩いていく。

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