第一話

この物語はフィクションである


というか、この世の大抵はフィクションである


捏造して 誇張して 都合の悪い部分はきれいに隠す

ならば、

上手な嘘をついてほしいのがアイドルファンというものだ。


この芸能界において、嘘は武器だ


「永愛、ほどほどにしなさい」


「はぁい、分かったよぉ」


私はテレビを消した。

画面内のアイの笑顔はプツリと音もなく消えた。



アイは私にとって、目標だ。

私もああなりたい!あんな風に日本中を魅了して、ああやって輝いて、ああやって、、


すごいな、私も頑張らなきゃ、、


「ごちそうさまでした!お父さ〜ん、学校行ってくるね!入学式だから、多分午後には帰れるよ」


「分かった、寄り道せずに帰ってくるんだよ」


「はぁい、いってきまーす!」


今日は、待ちに待った入学式。

都内でも珍しい、芸能科がある学校

まぁ、私は一般科なんだけどね、、

事務所に入ってないと、芸能科には入れないらしい

小さい頃から演劇はしていて、一応テレビとかにも出させてもらってるんだけどね??


「もぉー!だから、10秒で泣ける天才子役!!」


あ、かなちゃんだ。まぁた、言い合いしてんだか。仲良いねー、アクアくんも、ルビーちゃんも。


私がかなちゃんたちと会ったのは面接試験の日。


私は一般面接会場へと足を運んでいた。


「星野愛久愛海です。」


びっくりするほどのキラキラネームに耳が傾く。

偏差値70もあるのに、この学校来るなんて、

なんか訳あり、、、?


面接終了後。


「アクア!あなたが星野アクア!?」


廊下中に響く大きな声。

声の主は、赤くて毛流れのよい、あの天才子役だった。


「あ、すごい名前の人だ……」


ボソリと呟く。本人に聞こえてるなんて、思いもしなかった。


あ、お父さんからだ。

私はスマホに視線を落とす。

帰り際、なんとなく後ろを見た。

──視線が、重なった気がした。

……気のせいかもしれないけど。

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