第5話 桜ちゃんのデート 宇宙生物狩り編


夕日が校舎を茜色に染める頃、バスケットボール部のエース、上条アサヒは、体育館の隅で1人で自主練に励んでいた。


彼の端正な顔立ちは、汗で濡れた髪が額にかかることで、より一層魅力を増していた。

その姿を、遠くから見つめる少女がいた。


確か後輩で桜という名前の女子。最近、妙に目が合うと思っていた矢先だった。



バスケ部のエースとしてプレーに全力を注ぎたいから、俺は彼女とか全く考えてなかった、そのはずだった。 


過去に女子たちから何度も告られた経験があるが、その全てを断ってきた。しかし、桜だけは違った。


友達の話だと「ちょっとズレてる」とか「いきなりUFOの話を始める」とか聞くけれど、変な話、そのズレが妙に可愛く見えてきたのだ。むしろ、そのズレこそが、俺の凝り固まった日常にパルプンテでも唱えてくれるんじゃないかと、密かに期待すらしていた。


「上条先輩、いつもバスケ部の試合、応援しています。先輩のプレーはとてもかっこいいです。もしよかったら、今度、一緒にどこかに行きませんか?」


部活が終わった後、背後から聞こえた声に振り返ると、桜がそこに立っていた。夕日に照らされた桜の顔は、少し緊張しているように見えたが、その瞳は期待に満ちている。


「いいよ。一緒に遊びにいこうか」




アサヒの言葉に桜は目を丸くした。よほど嬉しかったのか、ぴょんぴょんと可愛らしく飛んでいる。その姿は、まるで初めてのお使いを任された子犬のようだ。


「はい、ぜひ!」


「今度の週末は空いているから。どこに行きたいとかある?」


「えっとですね……。先輩さえよろしければ、とっておきの場所があるんです!そこなら、きっと先輩も童心に帰って楽しめると思います!」


桜は両手を組んで、きらきらと瞳を輝かせている。そこまで言われると、さすがに期待してしまう。映画でも、遊園地でも、水族館でも、何でも来い!むしろ、桜が選ぶ場所ならどこでも楽しめそうな気がした。


「宇宙生物狩りに行きませんか?」










「宇宙生物狩り?」










時は20世紀中頃、冷戦下の世界において、アメリカ合衆国は国家の威信をかけ、宇宙開発競争を繰り広げていた。その陰で政府は密かに宇宙生物の研究を進めていた。


「プロジェクト・アメーバ」


そう名付けられたその計画は、宇宙空間から飛来したとされるアメーバ状の地球外生命体を極秘裏に研究するものであった。


研究施設は、人里離れた砂漠地帯に建設され、厳重な警備体制が敷かれていた。科学者たちは、アメーバ型宇宙生物の驚異的な生命力と、未知の能力に魅了され、昼夜を問わず研究に没頭した。


しかしある夜、研究施設内で事故が発生した。アメーバ型宇宙生物が研究施設から逃走したのである。そしてアメーバ型宇宙生物は、その高い適応能力で瞬く間に地球の環境に順応し、増殖を始めた。


事態を重く見た政府は、アメーバ型宇宙生物の捕獲、あるいは始末のため、特殊部隊を編成した。




「プロジェクト・クリーナー」


そう名付けられたこの部隊は、元軍人や科学者など、各分野のスペシャリストが集められ、アメーバ型宇宙生物の追跡、捕獲、そして必要であれば始末という、危険な任務を遂行することとなった。


部隊を率いたのは、戦争で数々の勲章を受けた歴戦の勇士、マイク・マクレーン大佐であった。

マクレーン大佐は、アメーバ型宇宙生物の脅威をいち早く認識し、部隊を率いてアメーバ型宇宙生物の追跡を開始した。


マクレーン大佐率いるプロジェクト・クリーナーは、アメーバ型宇宙生物の駆除のため、様々な作戦を実行した。


最新兵器の投入、科学者との連携、そして時には命をかけた肉弾戦。


プロジェクト・クリーナーのメンバーたちは、それぞれの能力を駆使し、アメーバ型宇宙生物との壮絶な戦いを繰り広げた。


果たして、プロジェクト・クリーナーは、アメーバ型宇宙生物の脅威から人類を救うことができるのか?


そして、アメーバ型宇宙生物の背後に隠された、さらなる陰謀とは?



物語は、まだ語られていない。








「これから宇宙生物狩りなんて、ワクワクしますね」


「???」


あ…ありのまま今起こっている事を話すぜ。

俺は後輩の女の子からのデートの誘いを受けたと思ったら、いつの間にか宇宙生物狩りに出かけていた。


な・・・なにを言っているのかわからねーと思うが。

俺も何をしに行くのか、わからなかった・・・

頭がどうにかなりそうだった。


Xファイルだとかスーパーナチュラルだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。


もっと恐ろしいものの片鱗を味わってるぜ。







「てか宇宙生物狩りって何!?」


「やだなぁ、先輩。さっき説明したじゃないですか。キチンと覚えて下さいよ」


さっきの説明でも意味がわからないよ!?

てか俺は今どこへ向かってるの?謎の飛行機に乗せられてるんだけど。



「もうすぐアメリカですよ。あっ、大陸が見えてきた」


「俺ら今、アメリカに向かってるの!?てかこの飛行機なに?」


「何って、至って普通の軍用機C-130 ハーキュリーですけど?」


「普通に知らないよ!?」



桜ちゃんは不思議そうに俺の方を見ていた。まるで俺が変な質問をしたかのように。


うん、やっぱりオカシイ。

落ち着け俺。


桜ちゃんからデートに誘いが来て、宇宙生物狩りに行こうと誘われて、今俺は軍用機に乗ってアメリカに向かっている。


うん、ヤベーことに関わってるわ、コレ。





「あっ、マクレーン大佐だ。挨拶しないと」


「誰!?マクレーン大佐って誰!?」


凄く怖そうな軍人が来た。




「Dear American.(マクレーン大佐、お久しぶりです)」

「This is foot.(今日もご指導ご鞭撻)」

「This is ball.(宜しくお願いします)」

「This is football.(クソみてぇな宇宙生物どもを皆殺しにしてやりましょう)」


「Dear European.(Oh、ファッキン桜じゃないか)」

「This is hand.(久しぶりだな)」

「This is eggball.(今日も宜しく頼むぜ)」

「This is American Football.(今日も宇宙生物どもをブチ殺してくれよ)」



何かよくわからないけど、謎の外国人軍人と喋ってる。桜ちゃん、英語話せるんだ。

てか知り合いなの!?桜ちゃん、君って本当に何者なの!?


「もうすぐ到着しますよ、先輩。着いたら宇宙生物をたくさん狩っちゃいましょう」


「ひえぇぇぇ」







「英語での作戦説明ペーラペラ」

「英語での質問ペラペーラ」



俺は今、宇宙生物狩りのための作戦会議に参加している。周りを見ると屈強そうな軍人たちが真剣な表情で作戦内容が映るスクリーンを見つめている。


まあ英語で説明されているから何を言っているのかわからないけど。



「桜ちゃん、あの人何を言ってるかわかる?」


「もちろんですよ。これからD戦上のアリア作戦からのバルバロッサ戦術で宇宙生物を始末します」


(全くわからん)



「あっ、会議が終わりました。今から準備ですね」





桜ちゃんも軍服に着替えて色々な装備品を身に着けている。めちゃくちゃ慣れているけど!?

俺も見様見真似で使い方のよくわからない装備品を身につける。




「おや桜ちゃん。久しぶりじゃあないか」


「あっ、デーブ・マッカーシーさん」



世界最高のスナイパーが愛用している銃を葬儀屋の地下室でメンテナンスしてそうな、謎のオッサンが出てきた。



「君専用にメンテナンスしたM16A2を持ってきたよ」


「ありがとうございます!」



オッサンが銃を桜ちゃんに手渡す。桜ちゃんは何やら銃の調子を確かめるように色々と動かしてている。



「もうすぐ作戦が始まりますよ。銃を選んでください」


「いや、俺こういうの全然わからなくて」


「ではL85A1を使って下さい。あそこの棚にある余った銃です」


某銃擬人化アニメで、作者好みなキャラクターにされてそうな銃を持つと、俺は緊張しながらも銃を手にした。








宇宙生物狩場



「イヤっほー!!倒せ倒せぇ!」


「ひえぇぇぇ」




戦闘の場所は廃墟となったテーマパークであった。びくびくしながら歩いていると壊れたコーヒーカップの乗り物に何かが乗っている。


「先輩!あそこにいますよ!」


そう桜ちゃんが話すと銃撃してタピオカみたいな見た目の宇宙生物を倒した。


一方、俺はコーヒーカップから出てきたアメーバみたいな生物に追われている。なんかアメーバから触手みたいなのが出てきた。


「うわっ!触手に捕まった!なんかキモい?!うわっ口に!ウゴゴ」


「先輩!今助けますよ!」




なんで桜ちゃんは普通に戦えてるんだろうか?それに比べて俺は銃を撃つのがやっとだ。全然当たんねえ。


あれ?急に銃が撃てなくなった。




「アメーバに捕まったぁ!服が溶かされるぅ!」


「先輩!今助けますよ!」







「Wow!Mexico looks like shit!(よう!ファッキン桜、お疲れ様さん)」


「That’s California.Mr.president(お疲れ様です、マクレーン大佐!)」


「Oh、We should build a wall around that too.(今日は助かったぜ、また来てくれよな)」




どうやら今日はこれで終わりなようだった。

俺は散々な目に合う一方、桜ちゃんは次々と宇宙生物を倒した。なんだ?このデート。




「今日は楽しかったですねぇ!先輩」


「ハハハ…」


宇宙生物のせいで、せっかくこの日のために買ったオシャレな高い服やズボンがボロボロだった。



「また今度一緒に遊びに出かけてもいいですか」


また桜ちゃんがデートに誘ってくれた。できれば、次は普通のデート先に行きたいな。



「えっ、あっ、うん。桜ちゃんがそう言うなら」


「では今度は恐竜人が支配する地底帝国へ行きましょう!」


「ひぇー」

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