家族や周りから必要とされなかった俺、敵国のお姫様助けたら私の執事になってと言われた件。

kai

第1話 今世とかいうクソゲー。

日が暮れそうな中、幼い少年が3人見える。前にいる兄らしき2人は少年らしく話しながら、遊びながら歩いている。その後ろをなんとか追いつこうと無理しながら早歩きで歩いている黒髪の少年は、はあ、はあ、と荒い息遣いが響く。小さな身体には到底似つかわしくない、満杯になった水桶を小さな手に持ち、必死に歩いている。しかし歩幅が全然違い、途中でよろけて、水をひっくり返してしまう。少年は、しまった、という顔をするが、もう遅い。兄たちはニヤニヤしながら、ゆっくり近づき、俺にこう言う。「あー!リックが水桶ひっくり返してやがるぜ。」とソラムが言うと、マルスが「はあ〜、忌み子の癖にまともに水桶さえ運べないなんて、母上は何故こんなやつを養っておられるのだろうか。」「母上は優しいからな。」……優しい?お前らが??優しいなんて思ったことないが、と心の中だけで付け加える。ぼーっとクソ兄貴達を見上げていると、次男のマルスが気付き、ソラムに言う。「兄貴、コイツ、ぼーっとこっち見上げてるぜ?」ソラムは、「コイツは忌み子だからな、黒髪に赤眼なんて魔族だろ。」そしてソラムはこう続ける。俺は魔族だから暴力を奮ってもいいらしい。

この世界は、理不尽で溢れている、と思いながら、蹴られ、殴られるのを我慢する。口の中切れたな……とテキトーに分析して、目の前のブタ兄弟を睨みつける。それが気に食わなかったのだろう、今度は胸ぐらを捕まれ、「あ?リック、てめぇ誰に対してそんな目してんだよ??」と言われたので、「すみません、兄上。」と一言詫びを入れると、気が済んだのか、ふんと鼻をならし、マルスに「帰るぞ」と声を掛けて去っていく。今日も夕飯なしか、じゃあテキトーに食料調達に向かいますか、と呟き、俺は1人山の中へ、入って行くのであった。

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