あの復讐をもう一度

@sink2525

第1話 初めまして


 世の中には嘘で取り繕われている。面白くもないことで笑っていたり。表面上では仲良いあの2人は仲が悪かったり。


 あの人が好きなのに自分の気持ちに隠し嘘をついたり。


 こんなん感じで世の中には嘘だらけになっている。

 嘘は時には凶器にもなる。癒しにもなる。

 嘘で笑いをとることだってある。どこまでが良い嘘なのか、どこからが悪い嘘なのかは誰も分からない。

 正解がないからだ。



 たとえ嘘で人を傷つけても、嘘を信じた君が悪いんだと世の中の誰かは言うだろう。


 嘘を信じることが罪かのように言う。


 果たしてそれは本当にそうなのだろうか。嘘をついた人が悪くはないのだろうか?


 そしてまた、こうやって考えれば違う考えが出てくる。


 嘘をついた人が悪い、と。

 それはそうだ。嘘をついた人が悪い。

 嘘なんてつくような人が悪いのだ。うん。悪いのだ。


 それなのに、それなのに、どうしてこうも俺が悪いと思ってしまうんだ。


 いや、俺たちは何も間違っちゃいない。


 そんな思考を巡らしている新咲優しんざきゆうは壁に背中を預けた。ひしひしと暑さが匂ってきた季節。


 東山高校の屋上には男女の姿があった。

 

 1人は体を丸め泣いてる。

 1人は壁に背中を預けて遠く輝いてる空を眺めている。


 いつからだろう。

 いったいどうしてしまったんだろう。


 俺はいったいいつから加奈を守ることが出来なくなってしまったんだろう。


 優は隣に居る彼女――菅原加奈を見つめた。

 震えている体を覆うのに丸めている。震えている手はこの状況の深刻さを伝えた。



 彼女には素晴らしい彼氏が居た。いや、素晴らしかった彼氏が。


 金城昇。


 スポーツ万能で勉強もできる。本当にもうそれそれはとても素晴らしい人だった。

 性格も本当に非の打ち所がなくて、完璧でそれは嫉妬もすることも失礼だと思った。



 ――――だけどあいつは。





 あいつは、あいつは。



 ――――――死んでしまった。




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