彼女が……。

龍淳 燐

 優しい君たちへ、待っててね。

 ある日のこと、自宅にブルーレイディスクが自分宛てに送られてきた。

 差出人は不明だった。

 一体誰からだろうと思いながら、DVDプレイヤーで再生した。

 そして、俺は唖然とした。

 ブルーレイディスクに映っていたのは、三か月前に俺が告白して付き合い始めた彼女と俺の親友とのベットシーンだった。

 「な、何だよ、これ……」

 俺は、ただ画面に映し出される自分の恋人と親友のベットシーンを2時間も見せられ続けた。

 後々に考えると、何も最後まで見る必要はなかった。

 でも、最後まで見続けたお陰で、一つ気が付いたことがあった。

 このブルーレイディスクって、どう考えても浮気の証拠だよな?

 しかも高画質……。

 その時の僕は、自分の恋人と親友のベットシーンに頭が可笑しくなっていたんだろう。

 そうか!これは、俺を裏切った恋人と親友の贖罪のブルーレイディスクなのだ。

 なんて優しい二人なんだ。

 これを慰謝料代わりにしろってことなんだな。

 でも、作品としては出演者の氏名や連絡先、住所が無いのはいただけない。

 そこでオープニングタイトルとエンディングロール、後はこの三か月間で撮った恋人の写真を追加した。

 そして最後に「これはノンフィクションです」という文言を追加した。

 これで、このブルーレイディスクは完璧な作品に仕上がった。

 この素晴らしい作品を一刻でも早く皆にも見てもらおう。

 そう思った俺は、このブルーレイディスクを大量にダビングして学校の先生を始めPTAの役員、生徒全員に着払いで送付した。

 それだけでは彼らの行為が無駄になってしまうと思った僕は、ありとあらゆる動画投稿サイトにも有料で閲覧できるよう投稿もした。

 ああ、彼ら二人の演技に感動した人たちがファンメールを送れるようにメールアドレスも必要だよねと思い追加しておいた。


 それから暫くして。

 この動画は世界中に衝撃を与えた。

 学校の先生やPTAの人達は涙を流して何かを叫んでいた。

 生徒たちは、二人を称賛することなく罵声を浴びせていた。

 恋人と親友は、僕の所へ来て「私達が悪かった。もうやめて」と哀願していた。

 俺が「何故?」と尋ねると、二人は驚愕の表情を見せていた。

 「だって、あれは君たちの贖罪の気持ちの表れだろ?」と言ったら、絶望の表情を見せていた。

 「今度はさあ、もっと刺激的な奴を撮影しようよ。二人ならできるって」

 そう言っていたのに、二人は僕に黙って学校を退学した。

 家に行っても、もう引っ越した後だった。

 俺は、二人に置いて行かれたのだ。

 でも、俺は悲しいとは思わなかった。

 だって彼らのお陰で、僕の手元には結構なお金が手に入ったから。

 君たちがどこへ行ったのか、すぐに調べるからね。

 待っててね、二人とも。

 必ず見つけて、新しい動画を作るんだ!

 ああ、今から楽しみだな。


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彼女が……。 龍淳 燐 @rinnryuujyunn

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