それを、恋と呼ぶには透明すぎて。
石川葉
爪の形
窓際で頬杖をついている、弥子に見惚れる。髪の毛が日の光を透かして明るく光っている。頬に当てられた指先の、その爪の形に惹かれる。それと分からないようにマニキュアされた薄いペールピンクの爪を、わたしはじっと見つめる。と、弥子がきっ、とわたしの方を睨む、そして破顔する。わたしは一度視線をそらしたあとで彼女を見つめ直し、手を振る。
見つめていたの、気づかれたな。
弥子は頬杖をつくのをやめて、ノートに何か書き付け始める。わたしも次の授業の準備をする。教科書の上に置いたわたしの指は、爪は、なんの色気も特徴もない、子どもの手だ。
そう、とても幼い。その手に紙の切れ端が置かれる。見上げると弥子が笑っている。瞬きし、その笑顔を心に収める。軽く手を振って弥子は行ってしまう。紙に目を落とす。ホイップうさぎがもこもこと描かれ、あの指から書かれたとは思えないつたない文字で、帰りアイス食べよ、と吹き出しが喋っている。
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