スマホでクラフトやってみたが地獄だった件

山田 ソラ

プロローグ 地獄の始まり

 彼は“クラフト”の世界に慣れた男だった。

 マウスを握れば、ブロックの並ぶ大地に家を建て、夜を越し、地獄を制覇し、ドラゴンを討伐した。

 パソコン版のクラフトは、彼にとって第二の人生。

 いや、もう一つの現実だった。


 だが、その相棒のパソコンがある日、唐突に息絶えた。

 ファンの音が止まり、画面が暗くなった瞬間、彼の中でも何かが崩れ落ちた。


 数年後。

 手持ち無沙汰な夜、彼はスマホを眺めていた。

 

「クラフト、あるじゃん。」

 

 懐かしいロゴ。見慣れたブロックのアイコン。心が弾む。

 

「まぁ、スマホ版だし。軽く遊ぶくらいならいいか」

 

 そう呟いて、彼は“購入”をタップした。


 指先ひとつ。気軽なはずの一歩。

 だが、その瞬間、彼はまだ知らなかった。


 スマホの中のクラフトが、

 どれほどの操作地獄と、誤タップ地獄と、

 謎のラグと、突然の溶岩死に満ちているかを。


 こうして、彼の“地獄クラフト日記”は始まった。

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