真・最終話 そして、人生は続く

 私は昨日カクヨムにアップした『1985年田舎之女子高つくば科学万博編』最終話「あの日の写真」をチェックしていた。入力ミスはないと思いたいけど、あとで見直すと誤字脱字衍字の山なんだ。タグもどうしようかなあ、あんまりノスタルジーにしたくないけど昭和ノスタルジータグを入れたほうがアクセス数が伸びるだろうか。


 そんなことを考えていたらLINEの通知音、タナカからだ。


「映画のスタンド・バイ・ミーを気取った最終話なんか書くからめちゃくちゃ怒ってましたよ。直接怒鳴りたいそうで、電話がいくと思います。私もちょっと怒ってます。富士通は確か最初のころから行きたいねってみんなで言いましたよ。ほんっとーに『信頼できない語り手』ですね。それに16歳の時と同じような友人でいるわけないでしょ、私達50代なんだから。ウガンダのチョコにも伝えておいたのでそのうち怒りの連絡がきますよ。悟さんには伝えないでおいてあげますがたぶんバレますね。悟さんと結婚したことは絶対に書くべきですよ。だいたいなんで悟さんにお土産としてあげたメダルをささほさんが持ってるんですか。結婚したからでしょ。」


 バイでもいい、性別なんか決める必要ないっていうから結婚したんだよ。旋盤加工だけじゃなく溶接するとこもかっこよかったし、結局「抱いて」って言わされたし。でも悟さんと結婚したって書くとクィアな詩人としての私のクエスチョニング感薄れるじゃん。メダルについては失敗だ、書き直さないと。つくばの思い出の品だからと思って悟さんの貴重品入れから借りて撮影したんだけど、小説としてはおかしい、整合性がない。書き直そうとパソコンの電源を入れたらスマホが鳴りだした。知らない番号だけど、さっきのタナカのLINEに「電話がいく」と書いてあったので出てみる。


「ささほ! 勝手に人を殺すんじゃないのよ!」

「誰? え? なんでこの電話番号知ってるの?」

「タナカが実家にいるってあんたカクヨムに書いてたでしょ。だから古い年賀状ひっくり返して伝令のタナカに連絡してあんたの電話教えてもらったの」

「タナカはまだ伝令扱いなのかよ……ていうか田舎之女子高読んだの?」

「読んだわよ。何よ悪役令嬢顔って。1985年にそんな言葉使う人いないわよ時代考証がおかしい! それに私のこと理不尽理不尽理不尽魔神ってひどいわ」

「理不尽魔神とまでは書いてないよ、理不尽とは書いたけど。いやそういえばどっかで書いたかな」

「理不尽魔神って何回も書いてたわよ。それに私生きてるから! 殺すな! 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは早死にする病気じゃないの。あんたこんな長い病名覚えてたんならググりなさい!」 

「元気なの?」

「車椅子だけどピンピンして働いてるわ! 今はリモートで仕事できるからね。車椅子のマーケティングやってんのよ。私まだまだ生きる気まんまんだからね! 筋ジスにも種類があるし昔より長生きできるのよ。あんた案外アホだから知らないんでしょ」

「案外アホだからってその言い方、本当にメグなんだね! 元気なんだね!」


 電話を切ると背後でペーパービーズ暖簾のジャランという音がして、声が響く。


「ささほ」


 う。この声は怒ってる。 


「愛・地球博も大阪万博も俺と一緒に行っただろ! なにがWe'll always have Tsukubaだ!」


 悟さん、怒るとこそこ? 悟さんに言われていま初めて気づいたけど、くるま館で出会った72歳のおばあちゃんの予言は正しかったんだ。私はつくば科学万博の次の万博も、その次の万博も行くことができた。2025年大阪万博の次の万博だって行けるかもしれない。


「アホザルって書いたのは怒らないの?」

「あのころの俺はアホなエロザルだったからそれはいい」


 悟さんの指先で金色のメダルが光る。南太平洋館のメダルだ。


「このメダル、おまえが俺にくれた初めてのものだったな」


 あとになってチョコからきたLINEメッセージ。


「田舎之女子高読みました。懐かしいけど美化しすぎだし、何より一年サバ読んでますよね。あのとき私は二年生でささほさん三年生だったはす。あとどうせならカクヨムでもペーパービーズの宣伝よろしくなのです♡(久しぶりに「なのです」してみた)。それと依頼したペーパービーズの宣伝ブログ早く書いてください。ペーパービーズの利用法に『のれん』『すだれ』『カーテンタッセル』を追加するのを忘れないように。来月20日に帰国するのでまたタナカと飲み会しましょう。メグさんに連絡ついたって聞いたのでできたらメグさんも。」


 チョコさんよ……私は1984年入学にしたかったんだよ……書評サイトに書くときオーウェルの『1984年』にひっかける必要があったので……それで一年サバ読みに……そしてカクヨムは宣伝禁止だよ!


 あああ、なんで人生はこんなにぐちゃぐちゃで綺麗にまとまらないんだ! 

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