交換日記

天使猫茶/もぐてぃあす

公園での出来事

「僕と交換日記をしませんか?」


 休みの日、午後の日差しを浴びて公園のベンチでぼんやりとしていると、同じくらいの年の男にそう話しかけられた。

 私の横に置いてある小さな立看板を見たのだろう。

 その看板には私自身の、とてもではないが上手いとは言えない字で「交換日記募集中」と書かれている。

 彼の着ているスーツは私のとは比べものにならないほど高価なものであることが一目見ただけで分かった。

 なぜこんな人が私のような貧乏サラリーマンと交換日記をしたがるのだろうか。


「ええ、ええ。やりましょうやりましょう」


 だが理由なんてどうでも良い。一度で良いからあんなスーツに身を包む生活を送ってみたかったのだ。

 私は立ち上がると日記を取り出す。そして一応聞いてみた。


「日記の中を確認しますか?」

「いえいえ。交換してから中を見るのが醍醐味じゃないですか」


 それもそうだと思いながら私は彼と日記を交換する。


 安スーツに身を包んだ彼はベンチから立ち上がると、それではとさっきまで私のものだった日記を抱えてどこかへと歩いて行ってしまう。たぶん家へと帰って日記の中を確認するのだろう。

 私は先ほどまで彼が座っていたベンチに腰掛けると日記を開く。

 そこには、ついさっき私のものになった人生が事細かに綴られていた。

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交換日記 天使猫茶/もぐてぃあす @ACT1055

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