第9話「楽しく公園で」

「えへへ……おにいちゃん、たのしいねぇ!」


 ブランコが勢いづかないように気を付けながら佐奈ちゃんの背中を優しく押していると、ブランコと共に動いている佐奈ちゃんが満面の笑みで俺のほうを振り返ってきた。


 うん、どうしよう。

 この子、かわいすぎるんだけど……。


 さすが美鈴ちゃんの血を受け継いでいるだけあって、容姿がとんでもなく整っているというのはあるが、それ以上に性格がかわいすぎる。

 滅茶苦茶甘やかしたくなるし、俺に子供がいたらこんな感じなのかな――と、つい想像もしてしまう。


 現在彼女がいないどころか、これといって仲がいい女の子も幼馴染以外おらず、このままだと独身で終わりそうな俺にとっては、二度とこんな日は訪れないかもしれない。

 

「うん、俺も楽しいよ」

「んっ……!」


 俺が笑顔を返すと、佐奈ちゃんは満足そうに大きく頷き、前を向く。

 そのまま俺は、佐奈ちゃんが満足するまでブランコを押し続けたのだった。


          ◆


「おにいちゃん、つぎすべりだい……!」


 ブランコで遊んで満足した佐奈ちゃんは、いったんベンチで休憩するかと思いきや、今度はすべり台で遊びたいと言ってきた。

 やっぱり、幼くても子供って体力凄いんだなぁ……と思い知らされる。

 当然、天使のようにかわいい笑みで言われた俺が、断れるはずもなく。


「いいよ」


 笑顔で、佐奈ちゃんに手を引っ張られながらすべり台に向かった。

 そしてすべり台の上にのぼった佐奈ちゃんは、俺のことを見下ろしながら小首を傾げる。


「おにいちゃん、こないの?」

「えっ……」


 佐奈ちゃんが降りてくるのをすべり台の下で待っていようと思っていた俺は、少し戸惑ってしまう。

 この公園にあるすべり台は横幅が広いものなので、大人も滑ることはできそうだ。

 でも、この歳になってすべり台で遊ぶっていうのは、少し抵抗がある。


「おにいちゃんと、すべりたい……」


 すると、佐奈ちゃんはウルウルとした瞳で俺の顔を見つめてきた。

 直後、背後から殺気とも思える冷たい気配を感じる。

 振り返れば、『何泣かしているんですか?』とでも言いたげな美鈴ちゃんが、笑顔で俺にプレッシャーをかけていた。


 美鈴ちゃん、ほんと俺に辛辣すぎないか……!?


 優しすぎるということで有名だった元学校のマドンナの圧に、俺は苦笑いしか出てこない。

 何より、佐奈ちゃんに泣かれるのは困るし、嫌われたくない俺はすぐさますべり台に上った。


「一緒に滑るって……」

「んっ、だっこ!」


 後ろに来た俺に対し、佐奈ちゃんは抱っこを求めてくる。

 しかし体はこっちに向いておらず、どうやら後ろから抱っこし、一緒に滑ろうということらしい。


 うん、それって俺が手を滑らせたら結構危ないんですが……。

 心なしか、美鈴ちゃんのプレッシャーが増した気がするし。


「だめ……?」


 俺が固まっていると、佐奈ちゃんはまたすがるような表情になりながら、俺のほうを振り返ってくる。

 この子、将来小悪魔になりそうだな……と思うくらいには、こちらの庇護欲を刺激してきまくっている。


 まぁ、本人的には打算無しに無自覚でやっているだけだろうけど、だからこそ天然で男を手のひらで転がしそうな、小悪魔に成長する未来が見える気がする。


 姉である上条さんは完全に計算をしてやっているけど、あの子も人を手のひらで転がすのがうまいしなぁ……。


「うぅん、いいよ。でも危ないから、暴れたら駄目だよ?」

「んっ……!」


 後ろから優しく抱き上げると、佐奈ちゃんは全身の力を抜いた。

 おかげでなぜかより重みが増した気がするのだけど、俺は気にせずすべり台に座り、膝の上に下ろす。


 そして、一緒に滑ると――

「わぁあああああ!」

 ――佐奈ちゃんはとても楽しそうに、黄色い声をあげるのだった。


 ……それにしてもこの子、出会ったばかりの俺に甘えん坊すぎる気もするんだけど……単純にこういう子なだけだろうか?


====================

【あとがき】


読んで頂き、ありがとうございます!


佐奈ちゃんがかわいいと思って頂けましたら、

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これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪

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