春の煙と夜のすすきのの空気が、とても柔らかく胸に残る短編でした。毎年同じ場所で集まるジンギスカン会が、ふたりの関係の“節目”として効いていて、読みながら季節の移り変わりが自然に伝わってきます。とくに本棚を組み立てる場面の近さが印象的で、四年間の積み重ねがそっと実る瞬間のようでした。派手さはないのに、あとからじんわり沁みる優しい春恋です。
よく、匂いで敬遠されてしまいますが、ジンギスカンはヘルシーですし、とても美味しいです。食わず嫌いはもったいない。この作品も、とても綺麗。青春の頃をちょっとだけ過ぎた、大人に向かう恋。ぜひ、読んでみてください。