ブランケット
三葉
ブランケット
そのソファには一枚のブランケットがある。
濃い緑色に、くすんだ赤と黄と青のラインが入ったブランケットだ。
寒い夜に、僕は君とそのブランケットによくくるまった。
君は僕に温もりの中でよく夢の話をしてくれた。
大人になったらアーティストになるんだ、とか、誰かを感動させられるような人になりたいとか。
今思えば青臭い話だ。
けど、僕はその話が好きだった。
いや、違うな。僕はそれを話す君が好きだった。
いつか、君がその本当に夢みたいな夢を叶えてくれることを僕は願っていた。
だというのに、君は消えてしまった。
成人する誕生日を前に、君は寒い夜トラックに轢かれた。
僕は涙を出したかったのに、その顛末を知人から聞いた時、不思議とただ茫然としていた。
その日も同じように、家に帰った。
リビングに入ると、ソファと、一枚のブランケットが見えた。
まだ肌寒い三月の夜だった。
ブランケットにくるまった。
変わらない温もりが僕の身を覆った。
君の夢が僕の中で反芻された。
涙が流れていることにさえ気づかなかった。
ブランケット 三葉 @mituha-syousetsu_
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