熊のよしきちが得たもの、失ったもの

春が出会いと別れの季節なら、秋は別れの季節として描かれることが多いように思います。
しかし本作の主人公よしきちには、得たものと失ったものの両方がありました。
得たものは、人間社会での、少し窮屈ではあるけれど快適な暮らし。食料に困ることはありません。
一方で、天然の秋鮭を狩る方法を教えてくれた、熊の友人とは疎遠になりました。

そんな中でも、ふたりの友情は失われません。

人間と、それ以外の種族。それを題材にした作品で、人間ばかり得をする展開が私は好きではありません。

こちらの作品は、それが良かったのか、悪かったのかという善悪の判断よりも、「ただそうである」という事実を、豊かな実りの秋と美味しそうなお料理とともに描き出しています。

読後感がよく、重いテーマを爽やかに処理した印象です。

違った角度がから秋を楽しみたい方におすすめです。