第7話 声のナイフ



「些細な親子喧嘩だったの。イタズラをしたわたしをパパが叱って、ママも一緒になって叱るからついね、言っちゃった。"パパもママも大嫌い、死んじゃえ"って」


 ソフィーは大切そうに写真立てを枕の下へと戻す。


「本当はそんなこと思ってないのよ? だけど両親はお互いをナイフで刺して死んだわ。5年も前の話よ」


 当時のことを思い出し、胸元をギュッと掴む。ソフィーの心の傷はまだ癒えることはない。


「その後はおばさまに引き取られた。だけどわたしのせいでおかしなことが沢山起きたわ。最初は同情的だった人たちもわたしを気味悪がって、今ではわたしの世界はこの部屋の中だけ」


 ベッドの横の窓にも大きな鍵がかかっており、開けることは不可能だ。


「わたしの噂を聞きつけた学者さんがやって来てね、お金を払うからわたしのことを研究したいと言ったの。モルモットになるだなんて嫌だったけど、おばさまは喜んでわたしを差し出した」


 ソフィーは遠い目をしてぼんやりと続ける。


「週に1度、研究室へ行く時にだけこの部屋を出られるの。研究は痛くて、恥ずかしくて、辛くて、嫌なことばかり。……でも仕方ないのかもね、わたしの声は人を傷つけるから」

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