1974年、オイルショックで高度経済成長に陰りが見えたこの年に、東京・隅田西高校に通う詩を書くのが好きな女子高生・真優美と、高校に通いつつ父が経営するキャバレーで働いている一希が、一冊のノートをきっかけに運命的な出会いを果たします。
二人はシンガーソングライターであるノゾミ・トクエのファンであり、彼女の曲の世界を共有しながらお互いの心が通っていきます。
その一方、二人の行く手には恐るべき陰謀が待ち受け、それまで秘められていた関係が明かされるなど、周囲の人達や運命に翻弄されていきます。
音楽を通した二人の絆の深さ、淡い恋心、そして不況の波に揺れる当時の世相が精緻に描かれており、読む側も当時の東京にタイムスリップし、せつなくも心ときめく恋をしているかのような気分でこの物語を楽しめるのではないかと思います。
オイルショックの時代。高校三年生で三者面談の迫っていた真優美は、自身の決められた進路を想い、鬱々としていた。
そんな時、ある事件がキッカケとなり、クラスメイトの一希と共通の趣味があることを知ると同時に、彼から曲の作詞を依頼されることに。
社会的な風当たりや、周囲を取り巻く人間関係に翻弄されながらも、己が自由を追い求める青春ドラマ作品!
文章構成、展開速度と、とにかくスルスル読み進めさせてくれる作品です!
時代や環境、そういった波に呑まれながらも、それに抗う高校生男女。音楽の道を志す二人は、果たして夢を掴めるのか……?
読み進めるほどに静かな温度が胸に広がっていく、とてもやさしい物語……そう感じました。
1974年という時代の空気が丁寧に息づいており、登場人物たちの心の揺れと自然に重なり合っていく描写がとても素敵です。
背景が物語を支えるだけでなく、人物の感情そのものとして寄り添ってくるようです。
また、作者さまの筆致はとても繊細で、言葉にされない思いや沈黙の間合いに、深い情緒がそっと宿っています。視線の動きや、ふとした仕草、交わされる短い言葉の中に、登場人物それぞれの想いがやわらかく滲み出ており、読んでいて心がほどけるようでした。
読後には、あたたかさと切なさがゆっくりと混ざり合うような余韻が残り、しばらく物語の世界に浸っていたくなる作品です。
静かで、やさしく、そして深く心に残る物語……続きが楽しみです。