第三十四話 本物のテープを探せ

 一希かずき道也みちやから「あなたと、いきたい」を録音した生テープを受け取ると、改めてテープを見つめた。

「俺が買ったのと同じテープだ。ケースはどうなってるんだ」

 道也はブースから、他のテープと一緒に置いてあった空のケースを持ってきた。「11番」と書かれた紙が挟まっており、インデックスには「あなたと、いきたい ジュニアとフラワーノート」と書かれている。

「これは横澤くんの字ね。ケースは本物みたい」

 インデックスを見た真優美はつぶやいた。

「『11番』は日陰ひかげ先生の字だと思うけど、先生が間違えたのかな」

 道也は首をひねる。

「とにかく日陰先生を探して、本物のテープを返してもらうぞ」

 一希は放送室を飛び出そうとする。

「待って、わたしも」

 真優美はノートを抱えると慌てて後を追った。


              ○


 既に放送室前には、『隅西すみにしコン』の投票に来た生徒たちが集まっている。その生徒たちをかき分け、一希と真優美は日陰先生を探しまわった。しかし、職員室にも三年一組の教室にもいない。

「ラジカセを買ったとき、先生がテープ売り場にいたわよね。わたしたちと同じテープを買ったんじゃないかしら」

「そうかもな」

 一希はうなずく。

「でも、だからといって取り違えるなんて」

 あせる真優美に一希が呼びかけた。

「一度外に行ってみるか」


              ○


 校庭も文化祭の出し物の呼び出しをしたり、模擬店の買い物に来た生徒でごった返している。だが、二人にとっては日陰先生を探すことが第一だ。

 体育館のそばに二人がさしかかった時だ。突然体育館の影から日陰先生が現れた。一希は駆け寄って尋ねる。

「先生! 俺のテープ持ってないか」

 日陰先生は手を振った。

「テープは渡したぞ。忙しいから失礼」

「そのテープが違ってたんだ」

 一希は訴えるが、日陰先生は小走りに立ち去った。

「先生、なんで話を聞いてくれないの」

 口を尖らせる真優美の傍らで、一希は日陰先生のやってきた方角を見つめていた。

「あっちが気になる。ちょっと見に行くか」


              ○


 体育館の裏には、粗大ゴミ置き場と焼却炉が置かれている。真優美もゴミ捨てに何度か来たことがあるが、今日は文化祭なのでいつもの何倍もゴミが捨ててある。

「あれ、テープじゃない?」

 真優美は焼却炉の入口を指した。入口から細長いものがきらめいてみる。

「ちょっと待ってろ」

 一希は段ボール箱の山を乗り越え、紙ゴミが詰まった焼却炉をのぞき込んだ。

「本当だ」

 一希は焼却炉の扉を開き、テープを慎重にたぐった。その先には紙にくるまれた塊があった。あわてて紙を広げると、テープが引き出されたカセットテープが出てくる。

「あった !」

 一希はおもわずガッツポーズをした。真優美もテープをのぞき込む。

「良かった。……あれ」

 真優美の視線は、テープが包まれていた紙に注がれていた。手書きで部屋の見取り図のようなものが書かれている。

「これ、厩橋うまやばし公会堂の中みたいだけど」

 紙には「厩橋公会堂 7月27日 会場にはリカが妹のハガキで入り 14時15分にセット」と書かれ、トイレに×印が書かれている。

「14時15分って、あの爆発があった時間じゃないか」

 一希が小声でつぶやく。

「まさか、爆破事件に兄さんとリカさんと日陰先生が関係しているの?」

 真優美は信じられない思いだった。

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