第二十三話 露店でのもめ事

 人形焼の屋台に並びながら、道也みちや一希かずきに切りだした。

「そういえば、さかさんと行った公開録音はどうだった?」

 一希は腕を組んで答える。

「一緒にノゾミさんの生歌を聴けて良かったよ。爆発騒ぎに巻き込まれたのは残念だったがな」

「爆発騒ぎか。親父は『土曜日の爆弾魔』と呼んでたな。警察にも取材するってさ」

 興奮気味の道也に一希は言った。

「けが人はまだ出てないけど、これ以上みんなに迷惑をかけないでほしいよ。坂もすごい怖がってた」

「それで、坂さんとの仲は進展したのかい」

 真剣な表情で道也は尋ねる。

「今度一緒にラジカセを買いに行く約束をした。二人で作った歌を録音したいんだ」

「彼女は歌もうまいのか」

 道也が感心した時その時だ。

「おい、どけよ」

 二人を押しのけるように、三人の若者が割り込んできた。先頭のタンクトップを着た若者が道也を見て言い放つ。

「メガネ鳥じゃねぇか。こんなところで会うとはな」

 若者ににらまれ、道也は後ずさる。一希が二人の間に割って入った。

「割り込みはよせ」

「お前、キャバレーの子か」

 もう一人のサングラス姿の若者が一希の腕を掴む。

「何だ、知り合いか」

 くわえタバコの男性が後ろから声をかけた。

「中学の時、こいつによくおごってもらってたんすよ」

 得意げに言い放つタンクトップ男に、道也が拳を握りしめて言った。

「君たちが金をせびったんじゃないか」

「お、ちっとは文句言うようになったか。成長したな」

 サングラス男が一希の右腕をねじり上げた。

「でもそれ以上言ったら、お友達に嫌われるぜ」


              ○


 少し離れて人形焼の屋台を見ていた真優美まゆみは、三人の若者と一希たちがもめているのに気がついた。よく見ると、男の一人が一希の右腕を掴んでいる。

(横澤くんの腕が危ない!)

 とっさに思った真優美は、周央と椿をその場に残して駆け寄った。

「来るな!」

 一希が真優美をにらみつける。今までない厳しい表情に真優美は固まった。

 そこに、別の男が真優美の側に近づいた。くわえていたタバコを髪の毛に近づける。

「この女、お前たちの連れか? パーマにしてやるよ」

 真優美は足がすくんで動けなくなった。その時、一希が空いていた左手でサングラス男の胸ぐらを掴んだ。

「いい加減にしろ!」

 一希の姿を見た道也も、拳でタンクトップ男を振り払う。その場で二対二のもみ合いが始まった。二人がケガするかもと思うと、真優美はいてもたってもいられなくなった。

「や、止めてください!」

 真優美は前に出る。髪の毛の先端が男のタバコに触れたらしく、一瞬焦げ臭い匂いがした。


 その時、真優美の後ろから怒号が響き渡った。

「お前ら、何やってんだ!」

 振り返ると、日陰ひかげ先生が立っている。その後ろには秋恵あきえ周央すおうたちがいた。

「先公を呼ぶなんて卑怯だぞ!」

 タンクトップ男が叫ぶと、三人はしぶしぶその場を立ち去った。

「間に合って良かった。トイレの側で日陰先生に会って話してたら、高橋くんたちがやってきて」

 秋恵は真優美の手を取った。

「そうだったの。高橋くんたちもありがとう」

「一希兄さんたちに何かあったら、俺も許せないですから」

 周央は胸を張って答えた。

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