第28話
近くのホテルに着いた二人は、手持ちのお金が少なかったのもあって二人一部屋ということになった。広々としたベッドに机など、家具はしっかりあるのだけれど、それによって少し窮屈なその部屋。必然的に結衣と乃亜の肌が触れ合い、その度に結衣の胸の奥から鼓動が響いてくる。
「シャワー先浴びていい?」
乃亜がそう聞いてきて、結衣は首を上下させて「いいよ」と伝える。やっと、一人になれるとため息をつき、広いベッドに横たわる結衣。
「どうしてこんなことになっちゃたんだろう。天音さんになんていよう……」
ベッドの上でもがき苦しむ結衣、足をバタバタさせて枕に顔を埋めていた。結衣の頭の中は色々なことでいっぱいだ、乃亜に天音に悪魔。いろんな事が頭の中に浮かんでくる、その一つ一つに「どうしよう」と言葉がこぼれてしまう結衣。目をつぶりながらそんなことを考えているうちに、時間はこくこくと過ぎ去っていた。すると、浴室から乃亜が出てくる。その扉を開く音に、すぐに反応して扉に視線を向けるとそこには、白いバスローブ姿の乃亜が立っていた。髪を濡らす水滴が光り輝き、火照った顔をホテルに常備していたタオルで脱ぐっており、その姿はあまりにも結衣とって刺激が強すぎて、目を片手で覆ってしまう。
「どうしたの?」
「い、いえ何も!」
結衣は吐息を零し、空いた口が閉じれずにいた。その姿に乃亜はハテナを浮かべて結衣の座るベッドの隣に乃亜が座る。
「シャワー浴びる?」
「も、もちろん」
そう言って逃げるように浴室に向かう結衣。まだ、暖かいシャワーを浴びた訳でもないのに、彼女の顔は真っ赤っかだ。
結局、頭の中がパンクしてしまいそうなぐらいの情報過多でまともに体を洗えた気がせず、ぎこちなくバスローブを巻いて浴室から出てきた結衣は特に話したいことをみつからず、ベッドの上に置いていたスマホを持って、乃亜の横でスマホを起動した。すると、突如として彼女が話しかけてきた。
「結衣、手を貸して」
「え!?あ、い、いいですよ」
ぎこちなく、手を差し伸べると乃亜はその腕をそっと優しく掴む。少しゴツゴツとした彼女の手に少し違和感を感じる。だけど、そんなことはどうでもよくて、私の手で一体何をやるんだと心臓が止まってしまいそうな程高鳴っていた。
「結衣は優しいから、教えてあげる。バイトのみんなには言わないでね」
「は、はい……」
彼女がそう一言かけると、乃亜は自分の胸に結衣の手を押し当てた。そんな、急な出来事に情緒が不安定になりかけるが、彼女の胸を触った時、結衣はやっと彼女の言いたいことに気がついた。
「乃亜……先輩……」
「びっくりした?」
「乃亜先輩って……」
彼女の触る胸はあまりにも硬かった。まるで、男性の胸のように。そのとき、乃亜の方から先に口を開いた。
「気持ち悪いよね」
「………もしかして」
「私はね、男なんだ」
唐突なカミングアウトに、思考が停止してしまう。今、彼女の頭の上にはスマホとかにある白いぐるぐるが頭上に浮かんでいた。そして、それに気がついた時、何か声をかけようとは思ったけど、なかなか声が出ずにいた。
「あのさ、気持ち悪いよね」
「そんなことないです!乃亜先輩はかわいいし、かっこいいから」
「本当?」
「はい!」
結衣の言葉に乃亜は少し笑みを零して、結衣の姿を見た。そこには、純粋無垢で、優しくて、可愛らしい女の子が座っていた。そのとき、乃亜はつい彼女の肩を掴んでベッドの上に押し倒した。
「の、乃亜先輩……」
「ずっと、男にしか興味がなかったのに、どうしてだろう」
乃亜は無抵抗な結衣の顔にそっと顔を近づける。近づくにつれて、いままで気が付かなかった彼女の可愛らしい容姿が顕になって、乃亜の心臓がドクドクと鳴り響く。そんな、極限状態の中、彼の唇は結衣の唇と重なり合い、お互いの唾液が唇を会して、混ざりあった。
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