閑話ラウニィー編 焚き火のぬくもり ― 出会いの夜
その夜、街はいつもより静かだった。
風も、人の声も、どこか遠くに沈んでいた。
焼け焦げた煉瓦の壁のそばに、小さな焚き火があった。
火は弱く、けれど確かに灯っていた。
その前に、ひとりの少女が座っていた。
銀の髪が風に揺れて、光を反射していた。
その瞳は、どこを見ているのか分からないほど深かった。
「……寒いね」
声をかけると、少女はゆっくりとこちらを見た。
頬には涙の跡。指先は氷のように冷たい。
「……少し、あたたまっていきなよ」
返事はなかったけれど、彼女は静かに焚き火のそばに座った。
その横顔は、何かを失ったまま、それでも生きようとしている人の顔だった。
「名前、聞いてもいい?」
「……オリビア」
「私はラウニィー」
火のはぜる音だけが、二人の間を満たしていた。
やがて、オリビアの肩がかすかに震え、涙がこぼれた。
ラウニィーは何も言わず、その隣に寄り添った。
その夜、ふたりの間に言葉はいらなかった。
ただ、焚き火の光だけがあった。
それが、すべての始まりだった。
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姉の出征と、帰らぬ知らせ
日が経つにつれ、オリビアは少しずつ前を向くようになった。
家には彼女の姉、アイリスがいた。
穏やかで、強くて、どんな夜も焚き火のようにあたたかい人だった。
でも、戦争は優しい人を選んで奪っていく。
徴発の知らせが届いた夜、オリビアは泣かなかった。
ただ、炎の前で剣を磨いていた。
ラウニィーはその隣で、何も言わず火を見つめた。
――その手の震えを、火が照らしていた。
**数ヶ月後、知らせが届く。
アイリスは帰らなかった。
オリビアは地面に膝をつき、声も出せずに俯いた。
ラウニィーは、そっとその肩に手を置いた。
「ここにいるよ。」と、言葉にしなくても伝わるように。
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英雄が降り立った日
港外れの広場。風が帆布を揺らしていた。
オリビアは毎日のように剣を振っていた。
その姿を、ラウニィーは少し離れた影から見ていた。
その日、軍馬の蹄が響いた。
深紅の外套をまとった男が、彼女の前で足を止めた。
――アルノー・グレイヴス。
「名は」
「オリビア・エルフォード」
「風の動きを“見る”目だ」
短いやり取りののち、推薦状が差し出された。
それを受け取るオリビアを、ラウニィーはただ見つめていた。
誇らしくて、胸が痛かった。
でも、その痛みの奥に確かな灯があった。
――私は、あの人の隣に立ちたい。
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地方推薦 ― 自分の足で
夜の路地裏。火矢の光が弧を描く。
ラウニィーはひとりで弓を引き続けた。
風と炎を合わせる練習を、何百回も繰り返した。
火の温度と、風の流れ。
あの夜の焚き火を思い出すように。
――オリビアの隣に立つために。
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士官学校 ― 並んで歩くために
士官学校の門をくぐった日、オリビアはすでに有名だった。
英雄に見出された少女。
でも、ラウニィーは少しも羨ましくなかった。
彼女の背中を見ているだけで、心があたたかくなる。
その光を守りたくて、ここまで来たのだから。
「おかえり、リヴィ」
「……どうして来たの」
「隣にいたいから」
風が吹いて、焚き火の夜の記憶が蘇った。
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空が唸った日 ― 三度目の喪失
帝国の飛空艦が初めて空を覆った日。
アルノー・グレイヴスが戦場で散った日。
オリビアは膝をつき、空を睨んだ。
その背中に、ラウニィーはそっと腕を回した。
「リヴィ。あんたは、まだ空を奪える」
その言葉に、オリビアの息が戻った。
風が二人の髪を撫で、灰を巻き上げた。
――焚き火の夜から始まった二人の物語は、
ここでようやく“戦場”という名の炎に届いた。
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【TIPS】
キャラクター紹介
◆名前
ラウニィー・エルステイン
◆性別
女性
◆年齢
25歳
◆特徴(外見)
燃えるような紅色の長い髪
綺麗な金色の瞳
オリビアの幼馴染でオリビアのことを唯一愛称のリヴィと呼ぶ
可愛さのある顔立ちで愛嬌もある
平均的な女性の身長よりは少し低いが豊満な体つき
柔軟な笑みを絶やさないムードメーカー
自分のことに対しては無頓着
オリビアとは親友で絶大な信頼関係にある
◆性格
細かいことは気にせず大体のことを笑い飛ばすが冷静さもあわせもっている
オリビアのことが大好きで男性にはあまり興味がない
◆特技
遠距離攻撃
支援行動
オリビアの精神安定剤
周りのことをよく見ており他人の感情を汲み取るのが得意
◆趣味
可愛いものが大好き
可愛いものにあまり興味のないオリビアに可愛い服を着させること
◆得意武器
自分の背丈よりも大きな大弓、短剣
◆得意魔法
火属性魔法
◆背景
オリビアと同じく貧困街出身。
オリビアとは物心がつく前から家族ぐるみで一緒にいることが多かった。
物心がついてからもオリビアとは常に一緒に行動する。
周りに気遣いの多いラウニィーだが、オリビアに対してだけは自然体で居られるようだ。
また町の中でも誰にでも明るく接し、周りからの人気も高い。
軍に入隊する際もオリビアとともに入隊し、持ち前の明るさと視野の広さを武器にメキメキと力をつけ小隊長の座まで上り詰めた。
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