人間が忌み嫌われている世界での冒険記

@takafctjp

第1話冒険の始まり

プロローグ

世界は八の地域と八の種族に六つの国、かつて大戦が起きて人間が

いつしか嫌悪された、それは明白であった。

人間による他種族の迫害、差別、奴隷これらの要素が嚙み合って

人間はこの世界インハビトスの人間以外の種族に忌み嫌われた。



プレイン・ホライズン地域、西の丘陵地帯。

果てしない地平線の向こう、朝霧が消えると同時に太陽が姿を現れる。

四季が明確な温帯のこの地は、温かな風と共に鳥の声が響き渡る穏やかな大地であった。



その丘のふもとに、木造の家が一軒。

そこに暮らすのは二人の兄弟、アレインとカロア。



赤髪の青年カロアはまだ見ぬ世界へ想いを馳せながら空を見上げていた。

黒い瞳には、純粋な好奇心で揺れている。

一方、兄のアイレンはその背後で旅支度を整えながら、弟の肩を叩いた。



アイレン:「…カロア、剣は研いだか?」

カロア:「うん、兄さん昨日で研いだよそれにやっとこの日が来たんだね」



木の床に差し込む陽光が二人を照らす。

鞄の中には旅の地図、乾燥肉と水袋、そして金貨が詰まった小袋。

長年ヒューマ地域国で平穏に暮らしてた二人が、

今ついに冒険者として第一歩を踏み出す朝だった。



アイレンは鞘に片手剣を納めながら、静かに呟く。



アイレン:「この国の外には…俺たちが知らない現実がある。

盗賊に支配された都市、他種族が築いた国、人間を嫌う世界。

それでも、お前は行きたいと思うか?」



カロアはわずかに間をおいて、笑顔で答えた。

「うん、だって知らないまま生きるのはつまらないから」



その言葉に、アイレンは口元を緩める。

弟が自分の背を追うように成長してくれたことが、何よりも嬉しかった。



二人はヒューマ地域国の首都ヒューマへ向かう。

そこには冒険者登録所があり、各地への依頼が提示されている。

市場では農民が収穫を祝う雲英祭の準備で賑わっていた。

香ばしいパンの匂いと人々の笑い声が広場全体を包み込む。



だがその穏やかな光景の裏で、

人々の口からはこうした噂が囁かれていた。


住民1:「聞いたか?東部のアナリスレア自治都市国家がまたヒューマ地域国に盗賊を送り込んだらしい」

住民2:「それにあそこは紛争が絶えねぇ…ヒューマ地域国まで火の粉が来なきゃいいが…」



アイレンは耳を澄ましつつもあえてその話題には触れなかった。

一方カロアはまだ戦争の現実を知らぬまま胸を躍らせている。

彼にとって世界とは冒険と希望の詰まった未知の宝箱に過ぎなかった。



登録所で名前を記すと、係員が書類を確認しながら言った。

係員:「カロア・アイレン兄弟か…新人冒険者登録完了、初依頼は北の農村での盗賊討伐依頼だ気を付けて行け」



書類を受け取ったカロアの手が震えた。

それは恐れではなく、期待の震えだった。

兄弟は互いに頷き合い、雲英川の橋を渡る。



太陽は頭上に昇り、空はどこまでも青い。

その先に広がる未知の地人間が忌み嫌われる世界へ、

二人の青年はゆっくりと足を踏み出した。



風が吹き抜ける。

遠く、雲の彼方で雷鳴が鳴った。

それが、長い長いインハビトスの冒険記の幕開けを告げる音となった。



プレイン・ホライズン地域の北端。

雲英川が緩やかに流れ、麦畑が風に揺れる穏やかな農村。

しかしその静けさの奥に、何か異質な気配が漂っていた。



その日、カロアとアレインは馬車に揺られながら村へ向かっていた。

依頼内容は単純、盗賊の討伐依頼。

だが依頼書の端には赤い印が押されていた。

それは危険度B新米冒険者にはやや重い任務を意味する印だ。


アイレンは地図を広げながら呟いた。


アイレン:「北の農村、そこで倉庫にある穀物と家畜を盗んでいくらしい、

夜に動く盗賊団だ慎重に行くぞカロア」


カロア:「うん、わかっている兄さんでも俺たちやっと冒険者になってきたね」


カロアの声には、不安よりも希望が勝っていた。

兄はそんな弟の横顔を見て、胸の奥で小さく笑ったがどこか心配があった。



夕暮れが近づく頃、二人は村の長老に会った。

古びた家の中長老は震える声で語る。


長老:「ここ数日、夜になると人の影が家畜小屋と穀物倉庫を襲うんじゃ…

見た者は皆人間の盗賊だったと…まるで戦の亡霊の様に…」


アレインは剣を撫で静かに頷く。


アレイン:「任せてください、俺たちが必ず討伐します」



その夜。

月明かりの下、風は穏やかに草を揺らした。

しかし、遠くから鈍い足音が響く鉄を引きずる様な音。


アレイン:「来たか…」


アイレンが剣を抜き闇の中に身を潜める。

カロアも続き手にした片手剣の柄を強く握る。

その瞬間、闇の中から現れたのは五人の盗賊だった。

ボロボロの鎧、錆びた剣、血に染まった布を巻いた腕。

彼らの目は狂気に染まり、笑いながら近づいてくる。


盗賊1:「ヒューマの国の犬共か…来やがったな」


盗賊2:「ここは俺たちの土地だ命が惜しけりゃ帰りな!」


叫び声と同時に、剣が交錯した。

金属が火花を散らし、空気を切り裂く音が響く。


アイレンは冷静に動き、敵の剣筋を見切る。

カロアはまだ動きが粗いが、兄の背を守るように必死に踏み込む。


アレイン:「カロア下がるな!俺の右を守れ!」


カロア:「わかった!」


カロアは返答と同時に敵の剣を受け止めた。

だが衝撃に腕が痺れる、金属の重さが恐怖よりも現実を叩きつける。



それでも彼は退かなかった。

胸の奥で何かが燃えていた冒険者としての誇りだ。



二人は連携し、一瞬の隙を突く。

アイレンの剣が盗賊の足を切り裂き、カロアがその剣を払い落とす。

最後の一撃は兄弟の同時攻撃。

夜空に響いた斬撃の音が、全てを沈黙させた。



残った盗賊たちは逃げ出し、草原の影に消えていく。

だが勝利の代償は大きかった。

カロアの腕には血が流れており、アイレンの顔には切り傷が付いていた。


アレイン:「カロア、大丈夫か?」


カロア:「うん、大丈夫だよそれより初任務達成だね」


カロアが笑うと、アレインも笑った。

その笑顔は痛みよりも眩しかった。



翌朝。

村の長老は涙を浮かべながら二人に感謝の言葉を述べた。


長老:「本当にありがとう……あの影が消えたおかげで、また子供たちが外で遊べる。」


アイレンは短く礼をし、カロアは静かに頷いた。

二人は馬車に乗り、再びヒューマ地域国の首都ヒューマに戻る。


首都ヒューマに戻り依頼完了報告書を提出すると受付の女性が冷静の表情で言った。


受付:「初依頼で盗賊団を鎮圧とすごいですね依頼完了です」



アイレンは苦笑しながら顔の傷を押さえ、

「弟の腕がなかなか良くてね」と冗談めかす。

その隣で、カロアは少し照れながら空を見上げていた。



その空の向こうには、まだ見ぬ世界が広がっている。

イナズマ・フォレスト、ブラック・ディープキャニオン、

これらの地域が人間を嫌う種族の国々。


彼らの旅は、ここから本当の意味で始まるのだった。



第一話「冒険の始まり」終了、次回第二話「アナーキー都市~~アナリスレア自治都市国家~~」

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