第14話 : 彌田さんの手を握って励ました
「以上で生物部の紹介を終わります」
その日の午後は部活紹介が行われた。
先日のこともあり、とにかく声を出すことを考え、七種さんと一緒に壇上に立った。
僕が声を出し、七種さんは淡々とPCでプロジェクターを操作している。
女子ウケを狙って育てている花の様子やカワイイひよこの動きなどを説明して何とかその時間を取り繕った。
「永瀬、お疲れ」
「う、うん」
僕の次は演劇部の紹介だ。
櫻葉から舞台袖で声を掛けられても精神的にもの凄く疲れているので碌に返事ができない。
「言葉で説明するよりも私達の活動を見てもらった方が早いと思います」
舞台袖から戻らずに暫し見ていれば、部員達がミュージカル仕立ての寸劇をしている。 声も良く通っているし、何より主役である常盤さんの存在感が凄い。
「以上です。皆さん、活動を見るだけで結構ですから来て下さいね」
いやあ、あれなら男女問わず見に行きたくなる。
演劇なんて……そう思っていた人達だってビックリしたはずだ。
演劇部に刺激されたのか、次に登壇した書道部は圧巻の書道パフォーマンスを披露した。『新入生の君達に輝かしい未来あれ。私達と一緒に語り、書こう』という活字にすれば読み飛ばしてしまうような文章でも、毛筆でそれを描けば字はその本来の意味だけではなく、映像としての新しい価値を生むのだと教えられた。
「あ、はわわ……」
演劇部に続いて圧巻のパフォーマンスを見せられた彌田さんが口を押さえている。
「あ、あの人達みたいなこと……できない」
身体が震えているのが良くわかる。
あれだけのものを見せられたあとでは僕だって同じようになっているだろう。
「彌田さん、大丈夫。大丈夫だよ」
「海鈴、落ち着いて」
僕と常盤さんで何とか落ち着かせようとしても、彼女の震えが止まらない。
「次は文芸部の紹介です」
司会から声が掛かっても、まだ震えている。
咄嗟に僕は彼女の手を握った。
「彌田さん、大事なのはパフォーマンスじゃない。気持ちを届けられるかどうか。言葉に想いが乗るかどうかだよ」
「う、うん」
震えは止まったみたいだけど、顔が赤くなった。
これで少しは気合いが入ってくれれば良いのだけど。
「文芸部の方はまだ……」
「はい!」
彌田さんがダッシュの勢いで壇上に上がった。
それに続いて部員の皆が着いていく。
「皆さん、まずはこちらをご覧下さい。私達が書いた小説の一部分です……」
大きな声で、スクリーンに投影されている小説の紹介をしている。
これだけの声が出ていれば大丈夫だろう。
「AIの時代だからこそ、ストーリーを考えることに意味があります。それこそが文芸という活動を通じて、皆さんの思考能力を高めるだけではなく、来る大学入試においても論文作成などで必ず役に立ちます……」
流石は文芸部だけあって、趣味としての活動ばかりではなく、大学入試にも役立つことをきちんと強調している。
進学校ならではのアピールができているじゃないか。
「皆さん、活動の見学だけでも結構です。ぜひ文芸部室まで足を運んで下さい」
一斉に大きな拍手が起きた。
僕の時はそんなことはなかったのに。
新入生が座る場所からほど近い所で見ていた僕の所に
「あんなカワイイ先輩が頑張ってるんだね」
「私、ああいう妹が欲しい」
そんな声が聞こえてきた。
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