ボッチの俺がスクールカーストトップの美少女達と校内ラジオをしている件について
三乃
第1話 校内ラジオ
県立
俺の住む県では、一応五指には入る進学校だ。
とはいえ、みんなが勉強ばかりに打ち込んでいる訳でもなく、それぞれが適度に遊び、適度に学び、自由な校風が人気の高校でもある。
そんな高校の2年2組に、俺こと、
今は6月後半……先週くらいまでは梅雨が続きジメジメと嫌な時期が続いてきたが、最近は少しずつ晴れ間も見えてきて、どうやらそろそろ梅雨明けも近そうだ。
窓を開けているとサッと心地いい風が俺の前髪をくすぐる。
……あぁ、心地いい。
今は丁度昼休みに突入したばかり。
さっさとお昼の弁当を食べて一眠りでもしたい気分だ。
俺の席は教室の窓側の一番後ろ。
誰からも目立たず、誰からも邪魔されない最高の席位置。
クラスでもボッチの俺にとってはここはベストプレイスだ。
……ちなみに嫌われていたり、虐められている訳じゃないよ?
俺が自分で望んでボッチを選んでいるだけだ。
つまり、俺は孤独ではなく、孤高のボッチって訳さ!!
人間関係に振り回されたり、自分の時間を自由に使用できるんだから、ボッチは最高だぜ!
……それに、誰にも踏み込まれない距離にいるのが、俺には一番安心できるからな。
いつもは賑やかなクラスメイト達もいなくなるだろうし、ゆっくり休めるなと期待するが……おかしいぞ?
いつまでたっても教室から人が減らない。
クラスのみんなはお昼になると中庭や食堂、部室……中にはこっそりと学校を抜け出してお昼を食べに行くやつまでいる。
そのため、基本的に昼休みに教室に残るのは大体半数程度だけど、今日はクラスメイトのほとんどが教室に残って弁当を広げている。
……あぁ、しまった……今日は水曜日だ。
『はーい、みなさん先週ぶりでーす! それじゃあ毎週水曜の校内ラジオ……『宇水ABC』はっじまるよー!!』
そんな事を考えていたら、教室のスピーカーから明るく可愛らしい女性の声が流れ出す。
それと同時に、俺の教室から歓声が上がり始める。
しかも、その歓声は俺の教室だけではなく、隣やまたその隣……いや、たぶん学内の全ての教室から上がっているだろう。
『宇水ABC』……先月の中旬ごろから始まった、毎週水曜のお昼休みの時間に流れる校内ラジオの名称だ。
そして、今、我が宇水高校ではこの『宇水ABC』が大ブームになっている……らしい。
『今日でこの『宇水ABC』も6回目かな? どうだっけ、ビーちゃん?』
『ああ、シーの言う通り、6回目になるな』
『はー、もうそんなにやってるんだな。……そろそろ辞めるか?』
『何言ってるの、エーちゃん!? この校内ラジオは好評なんだよ!! 辞めるなんてとんでもないよー』
『そうだな。エーはもう少しやる気を出すべきだろう』
『ビーは厳しいなぁ……。それに、俺はいつでもやる気はあるぞ。ただ、体がそれについてこないだけだ!』
『なら、そんな体は不要だろう? 切り離してあげようか?』
『まさかの斬首宣言!? 怖いわ!!』
無気力系ダメ男のエー。
クールで毒舌レディーのビー。
純粋無垢で快活少女のシー。
『宇水ABC』の人気はこのMC三人の掛け合いにある……らしい。
「今日も変わらずエー君は気だるそうだね!」
「ねっ! シーちゃんも大変そうだー」
「あー、俺もビーさんに諌められたい!」
「はははっ、お前はビー推しかよ。俺は断然シー推しだな」
三人のMCのやり取りを聞くだけでクラス中から好意的な感想が上がる。
『それじゃあ、早速お便りを読もっか!』
『はいよー。それじゃあ、シー頼んだー』
『もう! いっつもエーちゃんはアタシにばっかり読ませてー……まぁ、いいけどさー』
シーは文句を言いながらも、投稿されたお便りを読み始める。
『宇水ABC』の基本的な流れはいつも同じで、MC三人の簡単なフリートークと宇水高校の生徒のお悩み相談だ。
1時間しかない昼休憩のうち、大体2、30分の放送時間を持っている。
『えーっと、
『『ありがとうございます』』
『《エービーシーさん、こんにちは。初めてのお便り緊張します。今回は僕の悩みを聞いてください!》』
『はいはい、聞きますよー』
『《実は僕には今彼女がいるんですが、最近クラスの別の子から告白されて気持ちが揺らいでしまいました。僕はどっちを選べばいいんでしょうか?》』
『なるほどー。俺から言えることは、控えめに言って死ねばいいのにってことですかねー』
『ちょっとエーちゃん!?』
『そうだな。優柔不断な男は死ねばいいかもな』
『ビーちゃんまで!?』
エーとビーの率直な感想とシーの
『まあ、ただの死刑判決じゃあお悩み相談にもならないし、私なりの考えを答えてみるか』
『はい、それじゃあビーちゃんの答えをお願いします!』
『ふーむ……あくまで私の考えだが、相談者は今の彼女よりも告白してきた方に気持ちが揺らいでると思うけどな』
『えっ、ホント!? なんでそう思うの?』
『付き合っている彼女への想いが強かったら告白されてもその場でハッキリと断っていただろう? 相談者は告白してきた女性を振るのが惜しいと咄嗟に思ったんじゃないか? ……それに、告白されて悩む時点で今の彼女に対しても失礼だと私は思う』
『あー、なるほどねー。ビーちゃんの言うことも一理あるかも……。でも、アタシとしては今の彼女さんを大切にしてあげてほしいけどなぁ』
『シーの言う事も理解できるが、所詮私たちはまだ学生だ。色々な異性と付き合うのも人生経験だとは思うぞ』
『ビーちゃんは冷めてるなぁ。じゃあビーちゃんに彼氏がいて、その彼氏が相談者みたいなことを言い出したらどうするの?』
『ゼッタイニユルサナイ』
『怖いよ!?』
『あくまで私なりの客観的な意見を述べただけだからな。結局は自己責任だしな。最後に私から言えるアドバイスとしては、後悔しない選択を選べってことくらいだ』
『うーん、まあ難しい問題だよねー。でも、ビーちゃんの言う通り第三者の意見よりも自分の決断を大切にしたほうがいいかもね。エーちゃんはどう思う?』
『モテる男は嫌いだ! 死ね!!』
『はーい、それじゃあアタシ達三人の答えを纏めると『命を大事に!』でしたー』
『貴様に明日が来ると思うなよ。彼女が許しても俺が許さんっ!!』
『校内ラジオで殺害予告なんてしないでよ! アタシは『明日があるさ』さんの選択の結果、明日が来る事を祈ってまーす』
シーが最後に、雑な感じで結論をまとめた。
「えー、彼女をふって新しい彼女作るとかないわー」
「でも、ビーの意見も一理あるよねー」
「俺も
「あははは、お前に蜂将さんが告る訳ないだろ!」
「なんだよ、分かんないだろ!?」
クラス中から、さっきのお悩み相談について、それぞれの考えや意見が飛び交う。
「いやー、それにしてもやっぱ『宇水ABC』は面白いな!」
「分かる!! 私は個人的にエー君がツボなんだよねー!」
クラスメイトの一人がエーのことを褒めて少し恥ずかしくなる。
なんでって?
……それは……
俺こそが『宇水ABC』のMCの一人、エーだからだ。
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