12


 下野くんと初めてお花見をしてちょうど10年が経過した。


「梅子さん、準備は出来ましたか?」


 洗面所の鏡で必死にメイクを確認する私に下野くん──宴くんが声をかける。


「ちょっと待って、何だか目元が納得いかなくて……。ねぇ、おかしくない? 変じゃない?」


 振り返って宴くんに訴えるも、彼は申し訳なさそうな顔をする。


「僕の意見は参考にならないと思います。僕はどんな梅子さんも美しいと思っていますので、」


 それはつまり、今の私も美しいと思っていてくれるということか……。ならば解決じゃん!


「宴くんがそう思ってくれるならこれが正解だね! よし、じゃあ行こう」


 彼の手を握り、玄関に向かって歩き出す。


「お花見、楽しだね!」


 勿論愛でるのは桜ではなくて梅だ。

 今日で10回目となる宴くんとのお花見、そしてこれから先もずっと私達は梅の宴を続けていくことだろう。



《終》

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梅の宴 あおじ @03-16

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