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 10分程して到着したのは神社だった。

 下野くんは自転車を止めると、鳥居に一礼してからスタスタと境内に入って行った。

 私も彼に倣い一礼してその後を追いかけた。



 広い境内を彼は迷うことなく真っ直ぐに何処かへ向かっていて、私は黙ってそれについて行った。会話しようにも共通する話題がなかったこともあるが、下野くんとの沈黙が気まずいと思えなかったからだ。むしろ心地いい沈黙だと、私は思っていた。

 参道や本殿から段々と離れ、境内を奥へ奥へと行くと透き通るような甘い香りがしてきた。スンスンと鼻を動かすと、下野くんが立ち止まった。


「着きましたよ」


 たどり着いたそこにあったのは梅、いや、梅林だった。

 あかと白とピンクの梅の花が調和を保ちつつも入り乱れ、見事にほころんでいた。

 桜とはまた違う美しさの梅に見入っていると、下野くんが口を開いた。

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