case4-3
三番目の部屋は珍しく窓があった。壁暗幕などで覆っていない。部屋の床はクロスワードがプリントされている板が置かれている。板は二センチ程度の厚みである。クロスワードは縦横八マスずつに区切られていた。しかし文字は一文字も入っていない上、クロスワードに必要なヒントになる文もない。
「ここって何?」
中田の呟きに、摩池庫が反応して答える。
「用紙の説明ではイタリアン・ゲームと書かれています」
「イタリアン・ゲーム?」
中田の訊き返す疑問に答えたのはなんと高山だった。
「チェスのオープニングの一つ。優位に立つために考えられた策みたいなものです」
「タカさん、チェスやるのですか」
高山の説明に摩池庫は食いついた。やはり、摩池庫は色々と嗜んでいるのだろう。掛川の疑問はすぐに解決された。中田が摩池庫について口走る。
「キョーコは家の都合で色々習い事とかやっていたからね。ボードゲームも嗜みとか言って、将棋もオセロもチェスも全部負けたな」
「そうなんだ」
興味を持つと思って中田は話した。でも、掛川の表情は変わらない。
「この床は白と黒のマスがあるから、てっきりクロスワードのマスかと思った」
「私も思いました」
チェスと考えてもクロスワードと考えてもわからない。摩池庫と掛川は床をじっと見つめる。
「ヒントがあってもいいのにな」
中田は再び呟いた。呟きたくなる理由もわかる。この部屋には縦横八マスに区切られた正方形がプリントされた板が床に設置されているだけである。
掛川はしゃがんだ。床は厚みがある。掛川の脳内にある一つの考察が生まれる。イタリアン・ゲームは唯一のヒントだと考えれば、より可能性はある。
「マチコさん、イタリアン・ゲームの手順を教えて下さい」
「最初はe4、e5です」
掛川はそれを訊くと該当するマスに手で探った。引っかかる隙間を見つけると、掛川は引き上げて開いた。
見ていた中田と高山は驚く。その意味がわかった摩池庫は続けた。
「次はNf3、Nc6です」
掛川は言われた通りにマスを開いていく。
「その次はBc4」
掛川がマスを開いた。すると、キーワードが表示された画面が姿を見せた。
「やっぱり」
掛川が三人を手招きする。三人はマスの近くに集まった。
「キーワードは話し手を表す一人称一文字。つまりI」
「どうしてわかったのですか」
不可解な顔で掛川を見る摩池庫。掛川はカラクリを説明した。
「この板、少し厚みがあるでしょ。何か隠せる厚みである。ヒントはイタリアン・ゲーム。そうなると、手順通りに事を起こせば答えが出るっていう寸法さ。多分、初めから四つまでのマスにはセンサーが仕込まれている。順番に開けば五つ目にキーワードが出るっていう方式。五つ目の表示するこれはタブレット端末じゃないかな。厚さでも入るサイズだしね」
キーワードを記入した四人は、四つめの部屋に辿り着いた。掛川はキーワードの残り二つの文字が分かり始めていた。確証はあった。今行っている謎解きに関わる言葉だ。
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