憑き
月神天音
第1話鏡の中の誰か
「ねぇ、悠斗くん家の鏡、なんか映ってるよ」
灯里が指さしたのは、悠斗の部屋にある古い鏡台だった。
それは祖母の家から持ってきた年代物だ。悠斗は肩をすくめた。
「気のせいだよ。光の反射だろ」
今日は夏休み最後の日曜日。悠斗、灯里、健太の3人は、明日の新学期に備えて宿題の最終チェックをしていた。
「でもさぁ、なんかぼんやりとだけど、女の人の顔に見えない?」健太がのぞきこむように鏡を見た。
「うわっ、怖っ!」
健太がわざとらしい声を上げたが、悠斗には何も見えなかった。ただの古い鏡だ。
「心霊写真とか、そういうのと同じだよ。見る人が怖いと思えば、そう見えるんだ」悠斗は得意げに言った。
しかし、その夜。
悠斗が1人で歯磨きをするため、洗面所の鏡に向かった時だった。
鏡の中の自分は、いつも通り眠そうな顔をしていた。
だが、ふと視線を横にずらした瞬間、悠斗は息を飲んだ。
左の肩口の隙間から、黒髪の女の顔がのぞいている。それは一瞬で消えたが、確かにそこにあった。
ぼんやりと、だがうつろな目で悠斗を見ていた。
「う、嘘、だろ…」
悠斗は震える声でつぶやいた。灯里の言っていたことは、気のせいなんかじゃなかった。女は、本当にそこにいたんだ。
悠斗は急いで電気をつけだが、もう何も映っていなかった。
洗面所には、歯磨き粉のミントの匂いだけが漂っていた……。
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