014 ジャストフィットを会得したいが(下)

 その場で立ち止まり、胡坐を掻いた。ふと手を見る。

 淡いとは言え水色だから、人が見たら青い肌に見えるんだろうなぁ。

 あの町にこういう肌の色の人はいなかったから、モロに宇宙人だな。

 ……異星人だから宇宙人で合ってるな。


 結界が球体に戻った。

 ふっ、何かが来て食べ物を取られるのは勘弁だからな。


 空間収納から魔土竜の肉を出し、適当に切って串に刺し、塩を振って火魔術で丁寧に焼いた。

 茜はあの味を思い出して表情を綻ばせて焼けるのを待った。

 魔土竜が来る事もなく完食して、一人「ご馳走様」と言うと、満腹の余りに寝転んだ。


 満足満足。それにしても、お日さんが真上だなぁ……。

 とくりゃ正午だな。

 食後の休憩にこの日差しはきつく感じたが、それでも温もりを感じる方に近く、それは春の陽気に似ていた。

 寝たい……。寝そう……。寝れば……。


 目を見開き、腹筋を使って上体を起こした。

 良く考えなくても、こんな所で寝られる神経を持ち合わせていなかった……。

 さっさと次の町へ行こう。片言の挨拶に似た名前の町へ。……市だったか?

 引き続きジャストフィットを目指してやるかぁ!


 水魔術で出した水を飲み、食後の休憩もせずに歩き始めた。

 肌まで九センチメートルという所から一向に縮まらなかったが、気にせずに続けていた。


 あ!!

 昼はろの弁当を食べるんだった!!

 ……あぁぁあ~……。

 突如思い出すとやる気が萎え、足が遅くなった上、しばらく引き摺って歩いた。


 まぁいいか。魔土竜の肉は旨かったし、ろは夜に食べよう、夜。

 掛け声で弁当を見付けて買っただけだから、看板にあった絵とか字とか見てないんだよなぁ。

 だから本当に中身が分からないのがな……。

 反省。次からはきちんと見る


 今回は復活が早く、足取りも戻った。

 気を取り直して結界の続きをやるか。

 でもジャストフィットもイメージ大事のはずなのに、ぴったりいかんなぁ……。


 妄想かっ、妄想が足りないのか! ジャストフィットした自分ではダメなのか!

 全身タイツは顔がなぁ……、となると着ぐるみか?

 いや、待てよ? 着ぐるみだったら今と似たようなもんだよな。うーん……。


 悩むも思考が停止して、何も考えられなかったが、辺りを見回す事だけは忘れなかった。

 願わくは魔兎の肉をぽろりと落として頂けますと幸いでございます。

 動く物を見付け、また水漬けにし、喜び勇んで駆け付ける。


 よし、肉! 来い、肉!

 息を切らせて駆け付けても、中にあるのは黒の毛皮だった。

 あー……。

 激しく落胆していると、ふと頭をよぎった。


 ああっ! 物欲センサーか! クソォ!

 今頃気が付いたわ。物欲センサーのせいで出ないんだな?

 地球で生きていた時は物欲がなかったけど、ゲームとなると話は別だわな。

 これは困った。大いに困った。むむぅ……。


 悩みながらも毛皮を乾かして空間収納へ入れた。

 再び歩きながらジャストフィットの練習に励んだ。


 それにしても、魔兎以外おらんのかね?

 魔土竜は見掛けんし、土の中だからだろうけど、うーん、鳥の魔物とか、鹿とか猪とか熊とか?

 後、地球的に考えて、狸とか狐とかか。

 昆虫もいるなぁ……。

 スライムやサキュバスやライカンスロープはおらんのだろうなぁ。

 棲み処に行かなければいける、みたいなことを言っていたよな。

 という事は、行くしかないという事か。


 よし、諦めた。

 なんたら市へ急ごう。何て言う市だったか失念した……。

 道標を見たら思い出す。

 市だからきっと大きいよな。

 民家もいっぱいあって、田畑もいっぱいあって、中心に商店街があって、王都っぽいんだろうな?


 魔兎以外の魔物を探しながら完璧なジャストフィットを目指した。

 畑も相当広がっていて、疎らに家々が見えるようになり、城壁が見えると足取りが軽くなる。


 そして日が暮れる前にコニチラ市の門に到着して一安心した。

 まだ幼いという事もあり、門番二人が親切にしてくれ、宿屋の場所も教えてもらい、粉屋と布屋と本屋も教えてもらった。

 真っ先に宿屋へ行く。

 そして、夕食の時間を聞いて部屋へ向かった。

 部屋はベッドと机と椅子があって小ぢんまりとしていたが、壁は王都の宿屋よりも厚そうだった。


 王都の宿屋より上か?

 でもベッドは洗浄な。いや、俺と部屋ごとやるか。

 綺麗になっておくれ!

 掛け布団のカバーが一段明るい色になり、めくってみると、シーツも綺麗になっていて大満足した。

 それから靴を脱いでベッドに寝転がり、夕食まで必死でジャストフィットを目指していたが、出来るはずもなかったが、だからと言って落胆する事もなかった。


 あー、硬いけど、ベッドは安心出来るわぁ……。

 このマット擬き、完全にセンベイだろ……。

 それにしても日本の布団が懐かしいなぁ……。

 畳の上に布団を敷いて寝たい。

 あの藺草いぐさの香りを嗅ぎながら寝たい……。


 閉じそうになる目を風魔術で閉じないように固定し、目が乾きながらも夕食になるまで耐えに耐えた。

 寝るな……、寝たら死ぬぞ……。

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