第9話 再起動、Vauru覚醒

登場人物:ジャン、ラムル、科研所長マット=アリントス(名前だけ)、ガット=アリントス(名前だけ)、Vauru


 長らくカーレイ家格納庫の改修作業を進めていたジャン。ようやく改修作業が終ろうとしていた時、壁の中に異常な反応を発見したのであった。


 ジャンはRJV本部のラムルに直ちに連絡した。


ジャン「ラムル様、格納庫奥の壁に異常発見。至急来てください」

ラムル「あら、ジャン。こんな時間なのにまだ作業中?まだ長官室なのよ。これから帰宅しようとしてたところ。分かったわ待ってて、急いで向かうわ」


※※※


ラムル「これは……」

ジャン「いかがしますか?」

ラムル「ジャン、運び出せるように取り出して。科研に運ぶわ」


 壁に隠されていたVauruを発見後、丁重に壁から取り出すと、その全てが科研に移され、即刻調査の為のメンバーが招集された。


 科研所長マット=アリントス、ガット=アリントス、バンズが呼ばれた。


その後、数日間かけて修復を試みたものの叶わぬ努力に終わったのであった。


 だがしかし、Vauruのデータの一部だけは保存できた。

それは戦闘データが大部分だった為、ラムルの進言で地球のSR-5のアシスタントシステムとして搭載する事となったのだった。



※※※


 データ解析後すぐにラムル=カーレイ長官が科研に呼ばれた。


 そこに控えていた物に、アリントス所長から呼ばれたラムルが、解析されたデータの再起動を試みたのである。


 その物。そう、Vauruは当時、数少ないAnnで、リターナ星、ノアーナ星で最新だった。

リグール=ジュードはそれを見込んでVauruを従えていたのかもしれない。


 今、この時代、まさか過去の英雄を呼び起こす事になろうとは……。


 そして解析データの持ち主であるVauruがようやく再起動したのである。


Vauru「我が名はVauru。再び私を呼び起こしたのは……」

ラムル「Vauru……。……Vauruがあなたの名なのね。では聞いてください。私達ノアーナ星や地球が、試されている。大きな戦いに発展してしまうかも知れません……Vauru。今こそ、あなたの力が必要です」


Vauru「ノアーナ……」

少しの間、Vauruはデータをまとめているようだった。


Vauru「……分かりました。再び、戦うのですね。……私は記憶しています。あの戦争、あの孤独、あの……リターナの人々の言葉」


 しばしの沈黙の後、Vauruは呟いた。


Vauru「あぁ……うむ、了解しました。現状ではとても残念ですが、もう私は実態を持たないAIのようですね。でも今の私は、皆さんの“想い”に応える義務があるようです」



※※※


 科研にてデータを解析しSR-5に移植可能と判断され、コピーデータが地球のレンブラント所長宛に送られた。


 その後、Vauruのコピーデータは全てのSR-5の中にAI戦闘データリンクとして組み込まれ活用されたのである。


 地球では数か月の間、SR-5操縦士が悪戦苦闘。Vauruとの協調を試みた。


 やがては地球の関係者全てがVauruと呼んだが、Vauru自体は実態を持たないAIデータである。ところがこのAIデータを、特にVauruと多く接触するSR-5操縦士達には、ミセスVauru、或いはミセスと親しみを込めて呼んでいたのだった。

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