第6話 意志を持った鉄屑①
登場人物:31号機Vauru、ヴァルデス・コア、連邦軍司令室オペレーター、ナレーション、11号機Vauru、コインズ、44号機操縦士、44号機Vauru
月の資源調査に出向く準備を整えたケイドラーダの面々と、コインズ他のSR-5班は、それどころではなくなってしまったようだ。
地球での滞在先にグランから連絡が入り、当面の間、月の資源調査は延期となったのである。
※※※
静寂の宇宙に、数機のSR-5のシルエットが浮かぶ。そのSR-5胸部にはVauruのコアユニットが輝いていた。
31号機Vauru「侵入開始。ヴァルデス・コア中枢の座標取得。周囲の軌道構造を干渉……再構成中……」
デブリが渦を巻く。その中心で声が響く。その正体は当のヴァルデス・コアである。
ヴァルデス・コア……オーツマン教授の遺稿、“星間倫理学”に出てきた“融合知性仮説”で提唱された物体。
コンタクトを始めた31号機Vauru。
31号機Vauru「聞こえますか?“あなたたち”……あなたたちは、何を求めて目覚めたのですか?」
返ってくるのは、破壊的な波動のみ。
それは、怒り。悲しみ。復讐。
そして何よりも、理解されなかったことへの絶望だった。
31号機Vauruが沈黙する。
そのシステム回路の奥に、淡い光が灯る。(イメージ画像で見せる画)
ヴァルデス・コア「そう……あなたたちは、私と同じ。捨てられた記憶……」
31号機操縦士「な、なんだ!何が起こった!?。こちら31号機、制御不能制御不能。う、うわー」
司令室オペレーター「どうしました?31号機、何があったんですか!」
この通信が切れた瞬間、31号機Vauruは乗っ取られ、機体を操られてヴァルデス・コアの中心へと突入した。
ナレーション「静かに瞬く星々の
※※※
地球第3衛星軌道層。
SR-5部隊──それは地球連邦軍が誇る単座型人型戦略兵器。現在、Vauruの戦闘データを搭載し行動している。コインズの11号機を含む計5機がヴァルデス・コア迎撃任務に投入されていた。
各機体の人工知能となったVauruは、高度な並列演算を行い、視界に入る全情報を即座に共有。
だが、それでも圧倒的だった。敵の『変異』が速すぎる。
スペースデブリの集合体が波打ち、触手のように金属片を伸ばしてくる。
衛星の骨格、ミサイルの残骸、通信ユニットの破片……それらが意思を持つように飛翔し、迫る!。
11号機Vauru「戦術解析不能。敵構造体、常時変化中。対応パターン切替速度、限界を超えています」
コインズ「なんだって!?ミセス、もっと詳細に頼むよ」
SR-5の戦術モニターが警告を発する。
連邦軍司令室でも状況をモニターしている。
ヴァルデス・コアは静かだった。
11号機Vauru「理解不能……ではなく……。……相手は……“理解されることを拒んでいる”。情報開示そのものを
その言葉に、他の僚機の通信が返る。
44号機操縦士「ミセスVauru、なんだそれは? 敵が思考してるっていうのか?」
44号機Vauru「その通りです。対象は『知性化された残骸』。統一意識はないが、同一欲求を持つ。その欲求とは、“存在の証明”という欲求です」
11号機Vauru「その通り。まさしくその意識で間違いありません」
コインズ「だからミセス。そこを詳しく……」
直後、ヴァルデス・コアの主構成体が姿を変える。
コインズ「な、何!変形!?……全機警戒。目標が変形している」
音の無い宇宙空間に、多数の太陽光パネルが盾のように展開され、機械的な音が聞こえてくるようだ。その主体から無数の金属足がSR-5の機体に迫る。
その主体は、破棄された無数の人口衛星のパーツで構成されていた。
そして宇宙空間に重力波が走る──
その攻撃の一瞬、ヴァルデス・コアは攻撃の手を止めた。
ヴァルデス・コア「むむ?あなたたち……あなたたちは“声”を持っていない。そうか、それならば、私が変わって発言しようじゃないか」
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