小さな王国の最強魔法店 -Magicians Maestro-
茶巾まる
プロローグ
かつて、この世界は剣と血に支配されていた。
王国や帝国、小国さえも交え、幾多もの戦士たちが互いの領土を奪い合い、
果てしなき戦乱を繰り返していた。
だが――魔法という新たな技が何処より伝えられ、戦の形は一変する。
炎を操り、風を呼び、水を遣い、大地を揺るがす者たち。
各国は新たな技術として生まれた魔法使う者たち「魔術師」の育成に力を注ぎ、
やがて「魔導戦争」と呼ばれる新たな時代が幕を開けた。
その戦火は何十年もの間、世界を焼き続けた。
街は灰となり、大地は裂け、空には絶えず呪文の残響が響いていた。
そして――長き戦乱の果てに、ある魔術師が立ち上がった。
世界に突如と現れた正体不明の魔術師は、争いを続ける国家に対して人知を越えた、強力な魔法を繰り出し数千、数万の軍隊を一瞬で滅ぼした。
魔術師は特定の国家を擁護せず、紛争を続ける国に無差別に表れ強大な魔法を用いて争いを次々と終結させていく。
たった一人の魔術師の参戦により想像もできないほど兵士と物資が失なわれた。
対応に追われた各国は、対策を打ち出すが神出鬼没の魔術師に成すすべもなく、長引く国家間の戦争が一変し始める。
人手不足に物資不足が全ての国に蔓延し、長期に及ぶ争いの歴史から一転。
各国家は戦争の継続が困難な状況に陥り、戦争から一転和平へと歩みだしだ。
国家首脳同士の会談により魔導戦争終結宣言、長き戦いに一旦の終止符が打たれる。
各地での紛争が静まりはじめ平和への道へ歩みだした世界を見すえた魔術師はまるでそれが自らの使命だったかのように突如として世界から姿を消す。
その後、突如として現れた魔術師の姿を見たものはいなかった。
世界に平和をもたらした最強の魔術師は皆に語り継がれこう呼ばれた。
魔法を極めしもの『マジシャンズ・マエストロ』
世界を救った通称「マエストロ」と伝説の名を残した。
――
魔導戦争集結から十五年、国同士の小さな小競り合いは散発していたが
世界は一旦の平和を取り戻し、戦後復興と国家再編が進んでいた。
各国家は強大な魔術師の育成、強力な魔法の開発を促進し戦争の抑止力を求めた。
その結果、今までより卓越した魔法の力を持つ強力な魔導師が新たに生まれる。
世界では自国が抱える強力な魔導師を力として誇示し国家間における力の抑止力と、世界の均衡を図るための新たな魔導師認定機関マエストロ評議会を発足。
評議会では四年に一度『マエストロ』に匹敵する強力な魔導師を選抜するための、『議会選定儀』を開催し数多もの候補者の中から勝ち抜いた五人を新たにマエストロとして認定し称号を授与した。
五人のマエストロ達は、世界の調和と均衡を保つため各国家間の守護者として帰属を果たし防衛の要として従事することになる。
そして四大強国よりはるかに小ない領土、南方の領地を牛耳っていた当主
『エイルフォード家』が、新たなる国家設立に動き出す。
自らの領土を領民たちに提供し、他の国とは一線を画す商業を中心とした都市国家の建国を宣言。
若輩ながら領土の盟主となったロドリック・エイルフォードは、新商業都市国家を『カルドラフ』と名付け初代国王として就任。
初診演説として国家としての目指す目的を、国民たちに伝えた。
「国は民とあり、民の繁栄こそ国家の繁栄」
国王の信念により貴族等の身分階級は一切用いず、国の繁栄に務める全ての人種達が平等に国民として生活できる平和的な国を目的に動き出す。
人間、エルフ、ドワーフ、獣人族など人種を問わず様々な人達が集い、国王と臣民が一体となった協力関係により繁栄への道を進めた。
商業の発展により他国には無い先進的な技術や品物を取り扱う商業を中心とした
『カルドラフ商業国家』が誕生する。
そして、国王の信念に賛同したある人物が臣民として加わる。
防御中心の強大な魔法を使い、世界五大マエストロへと上り詰めた女性。
その名は「アルテロ・グレイダイク」
彼女は商業都市国家近隣の山村出身で一人魔法の研究を静かに続けていた。
風の噂で新たに生まれた国家へ赴き、国王と面会を果たす。
国王の人柄や、商業国家の平定を望む信念に感化され、自が国を守るための守護者『国家特務防衛魔導師』として従事する事を約束し、臣民として仕える事を誓う。
彼女が繰り出す絶対防御魔法「アブソリュート・ウォール」はドラゴンのブレス、
ワイバーンやジャイアントオーガ等の強大なモンスターの物理攻撃に加え、幾多もの魔法すら守護する強大な防御結界魔法だ。
彼女は商業都市国家全体を絶対防御魔法の力で全て覆い守る新たな仕組みを構築。
他国からの侵攻の抑止力として、平和と安定した国の繁栄に一役買うことになる。
国を防護するという功績により商業国家へ住居を与えられる事になったアルテロは、大きな屋敷等を望まず、商業地域に小さな家を手に入れ生活の拠点を移す。
手に入れた家を店舗へと改装し魔法に関する様々な商売を生業とする、自称世界最強の魔法店『魔法屋タリスマン』を、都市国家内に開業する。
開業から時は流れそれから数十年後
魔法屋タリスマンに、今は店主の姿はない。
けれど、店は何も変わらないように今日も活動の息吹を感じる。
行方不明となった主の帰りを待ち続けながら、その小さなお店は二人の少女によって本日も営業を続けていた。
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