第2話 パーティという物

カイトがクラリス王国に来て数ヶ月経った

ある日の夕暮れ



「ふぅ。ゴブリンの討伐クエストも終わったことだし飯でも食いに行くか?」


「ごめんなさい。あたしは遠慮しておくわ。」


「OK!全然気にすんなよ!トウリは行くだろ?」


「あぁ。行こうか。僕の血となり、肉となる物だ。今宵は上質な肉でも食そうではないか。」


トウリには食堂の肉を最高級の肉とでも言って食わせておこう。


食堂に移動し、

晩御飯を食べているトウリとカイト


「そういえばさ、ルミネのやついつも晩飯誘っても来ねーけど、なんかあんのかな?」


「さぁ?乙女には色々とあるものさ。詮索は野暮という物だろう。それよりそこのウェイターこの肉を焼いたシェフを呼んでくれないか?」


んー。確かに詮索するのもよく無い気がするんだけど、ルミネのやついつも申し訳なさそうにしてるのがやけに気になるんだよなぁ


シェフにダル絡みしているトウリを他所に

カイトはルミネのことが気になっていた。



翌日


「おはようルミネ!トウリはまた寝坊みたいだ。まだ懲りずに宿屋に入り浸ってるみたいだぞ。」


「おはようカイト、衛兵に捕まっちゃったりしたら困るわね、そろそろやめさせないとね」


なんだろう。ルミネの顔色があまり良くない気がする。


「あ、あのさルミネ、なんか困ったことがあったらなんでも言えよ?仲間だからさ俺たち。今日もなんならクエスト休んでも良いわけだしさ」


気になることはあったが、昨日トウリに詮索は良くないと言われたこともあり、深く聞くことはやめた。手伝えることがあるなら手伝いたいが。


「いや。あたしは大丈夫よ。今までだって1人でやってきたし、これからだって。カイトやトウリに迷惑をかける訳にもいかないですもの。」



こういう時は話聞こか?って言うべきなのだろうか。


「やぁ。皆の衆。お早う。朝はいい!朝日は僕を照らし、そよ風は僕を喜ばせる。君たちにこの感性は到底わからないだろうがね」


朝から胃もたれしそうなくらい濃いが、

ちょうど気まずくなりそうだったから

トウリ、ナイスタイミングだ!


「おせーしお前のことは一生!分かんねぇよ!」


なんてやりとりをしていると、ギルドにいた冒険者達がなにやら噂話をしている声が聞こえた



「なぁ?聞いたか?あの噂…」


「あぁ。新しい王が産まれたらしいってやつだろ?」


「あぁ、なんでも人族だって話だぞ」


「まじかよ、じゃあ人王様以外の人族の王ってことかよ!これならあの魔王達も黙っちゃいられねーな!」



「新しい、王?また王国が出来たって話か?」


「カイト、もしかして7代魔王も知らないの!?」


ルミネは驚き、トウリは呆れたような仕草と顔をしていた。


「7代魔王っていうのはね、この世界を統べる

7柱の王たちのことなの。本来、人族に害をもたらす者のことを魔王と呼ぶのだけれど、あの『人王』も7代魔王に数えられてるわ。亜人から見ればあの方も魔王そのものだもの。。」


「そうなのか。7柱の魔王!かっけぇ!けど人の敵なのか、、そんで1人増えて8代魔王になったってことなのか?」


「いいえ、ここ100年、7代魔王の1柱はずっと欠番だったの。そして最近、新たな魔王が産まれたってこと。」


「えーっと7代魔王が、6代魔王で〜、6代魔王から7代魔王〜ってことか!ってややこしいな!」


「そして、魔王になるには条件があってね。」


「魔王になるにはステータスのいずれかを黄金ランクに上げる必要があるの。黄金ランクというのは、黄金ステータスとも言うわ。

まぁ端的に言えばステータスが局地に達した、ということね。ステータスには人それぞれ上限があって、まぁ普通の人はまずどれだけ研鑽を積んでも届かないわね。」


「黄金ランク?それなら俺の速さのステータス

もう黄金ランクだぞ?ほら、これ見てくれよ」


!?


カイトのステータスウィンドウを見て驚く

ルミネとトウリ


「おいおい、カイト。確かに少しすばしっこい奴だとは思ったが、まさか速さが黄金ランクとはな…。」


「驚いた、確かにあの速さなら納得だわ。、でも他のステータスは……。うん。。」


「あー!もう分かってるよ!ザコって言いたいんだろ!でもこれって俺も魔王ってことだよな!?」


「いいえ、カイト。魔王になるには黄金ステータスが最低でも2つ以上必要と言われているの。」


「フフ。君は言うなれば魔王ではなく、魔王になりきれぬ凡夫ということだな。はっはっ」


殴りテェ。。


「ぐぬぬ。まぁ確かにそうだ。早く走り過ぎちゃうと自爆しちゃうから小走りしかできないんだよな…俺。」


「あっはっはっは⭐︎」


爆笑するトウリ


「それならカイト、良いものがあるわ。まだあればいいんだけど。。とにかくクエストを受ける前にまずは鍛冶屋に行ってみましょう。」


俺たちはルミネに連れられ鍛冶屋に向かった。


「あ、よかった!まだあったわ!」


そう言ってルミネが手に取ったのは、足枷に短いチェーンが付いていてその先には黒い鉄球が繋がっていた。


「これって。。囚人とかが付けるやつじゃん!」


「これは制御の足枷と言って、本来はカイトの言った通り、囚人や犯罪者…あとは奴隷…に付けておくものよ。これを付けると、

移動速度にデバフがかかって普通の速さならまず歩くことが精一杯なの。」


「あっはっは⭐︎」


「いやいやいや!これじゃ俺がお前らに飼われてるみたいじゃないか!」


爆笑するトウリと不満を漏らすカイト


「ま、まぁ付けて走ってみたら?意外と似合いそうだよカイト!」


「もー。一回だけだよ?」


ちょっと満更でもないカイト


足につけて、このベルトを締めればいいんだな?


よーしちょっと外に出て本気で走ってみるか。


カイトは足に力を込め、思いきり地面を蹴った


ドビュン!!


「おぉ!おぉ!速えぇ!!けど!コントロールできる!」


クラリス王国の街を置いてゆくカイト


ギュン!!


目の前には賑わう商店街


「見える!走ってるのがちゃんと分かる!

これなら、避けられる!」


ギュッギュン!


人並みを駆け抜けるカイト


飛んで行く果物

突風で捲れるスカート


「おっ白パン!」


ドビューン!



一方その頃…


「行っちゃったわね。」


「あぁ。もう見えないね⭐︎」


「…。ドロボウ……」


呆然と眺めてるルミネとトウリと

唖然としている鍛冶屋のおっさんであった。




「ふぅ。ただいま!これ欲しい!おっちゃんいくらだ?」


「いくらだ?じゃないわよ!1時間も帰ってこないで!あたしたちがもう3万ゴールド支払いましたっ!」


「ごめんごめん、3万ゴールドもすんのか!これ、今手持ち2万ゴールドしかないからクエスト行って報酬出たら返すよ!」


「そうね、そろそろクエストに行かないとね、いつもよりかなり遅くなっちゃった。」


「夜までには、帰りたい所だね⭐︎」


…。

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