違う名前

 『佳奈』と『佳奈』。

 【なかたかな→なかたかな→なかたかな→】

 もし、これが、しりとり。ならば。

 同じ言葉を二回言ったら。

 げーむが終わる? 

 同じことを考える、かながいた。言った。

「同じ名前っ! 同じ漢字の人を殺してっ!」

 悲鳴に混じる、情報を持った声は。

 響く。

 人の騒々しさが少し和らいだ気がした。

 相変わらず。

 【なかたかな→】は増えているが。

 私と同じように壁際に逃げてきた人。

 部屋の中央で立っている人間が減ったこと。

 だんだんと緩やかに。

 カウント。

 【26】

 そして。

 【25】

 を初めてみた。

 けれど、それは。

 嵐の前の静けさ。

「人っ、土土っ。大きいっ、示すっ。人っ、土土っ。大きいっ、示すっ。佳奈が二人いるっ」

「しりとりっ。しりとりだからっ。同じやつを殺せっ」

 どこからか、かならの声。


 かな達の目は『佳奈』と『佳奈』に。

 一人の『佳奈』が叫んだ。

「違っ、わたっ」

 叫んだのがいけなかったか、『佳奈』は。

 突き飛ばされ。倒れ。

「いやっ」


 【30】


 まだ頭が繋がっている『佳奈』にも、

「来ないでっ。やめてっ」

 『佳奈』はゼッケンを隠すように。

 身をくるめた。

 両手は首輪を守っている。

「うるさいっ。死ねっ」

 『叶』が『佳奈』の横腹に、蹴りを入れる。

「死ねっ。死ねっ。死ねっ」

 モニターにも『叶』が蹴る様子が映る。


「あのう」

 突如。横から、緊迫に似合わない。

 間の抜けた声が聞こえた。

 向くと。女の子を抱き抱えた。

 『香那』がいた。

 女の子。ああ、『かな』。

 あの子供を助けた女だ。

「私、あのっ。壁をぐるっと、回ってきたんですけど」

「あんっ?」

 自分から、こんな声が出るとは。

 くそっ。イライラする。

「もう一人いるんです」

「何がっ」

「人土土大示すの『佳奈』さんです。ほらっ、あの、ワンピースの」

 指し示す方には、ああ。確かに。

 ゼッケンを隠している女。

 人偏と上の土。『奈』は分からない。


 ぼんっ。

「死んだっ。死んだ死んだ死んだ死んだ」


 音と声のする方を見る。

 モニターを見る。

 両手をあげる『叶』と。

 【30】

 【29】

 【28】

 そして、増えている。

 【なかたかな→】


「なんっで。なんでなんでなんでっ」

 『佳奈』を殺した『叶』が頭を掻きむしる。

「中田佳奈っで、二回いいいいいっ」


 まだ終わらない?

 しりとりという仮説は間違い?

 いやっ。『仲田』か? 

 『中田』が違ったのか?

 そんなことを考えていると。


 三人目の『佳奈』の近くにいる。

 『夏奈』が叫んだ。

「もう一人いるっ。『佳奈』がここにいっ」

 『佳奈』は、『夏奈』が全てを言う前に。

 『夏奈』の首輪を下から殴りつけた。

 『夏奈』の花火が打ち上がる。


 『叶』とは別のモニターに『佳奈』が映る。

 『佳奈』はモニターをちらりと見て。

 『叶』を、指差し、叫ぶ。


「その一文字の女っ。かなえ、だっ!」



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