なかたかなげーむ

さわみずのあん

げーむすたーと


 ぴっ。


 首。元に。

 何か電流のようなものが、流れた気がした。


 ぼやけた意識と視界。

 薄暗い。


 ぴっ。


 ぱっ。と意識が戻った。

 ぱっ。と照明が点いた。

 真っ白。

 一面の白。だんだんと焦点が絞られ。

 劇場の、舞台の、天井?

 眩しいライトの間を、骨組みが縫っている。

 よくよく見ると、カメラ。のようなものも。

 視界の端には、真っ白な壁。

 私は上を向いている。

 顎を引くと気がついた。

 冷たく重い金属の首輪をしていること。  

 知らない真っ白な部屋に立っていること。

 目の前には。


 頭。背中。『中田』。

 ……『中田』『中田』『中田』『中田』……

 …『中田』『中田』『中田』『中田』『中田』…


 『中田』と書かれたゼッケンを背中にしている。

 女性が何人も立っていた。

 私の前に。そして私の横にも。

 左右を見回した後。

 私の胸を見る。

 『奏音』

 かな。

 私の名前がゼッケンに書かれている。

 私は振り向く。


 ……『華那』『かな』『カナ』『果夏』……

 …『霞奈』『嘉菜』『果菜』『香那』『佳那』…


 すぐ後ろの一人は、小学校一年生位の女の子。

 『かな』と書かれている。

 隣の『カナ』と書かれているお婆さんを。

 不安そうに見ている。


 『中田』と『かな』


 そうだ。思い出した。

 なかたかなのかいだ。

 ここにいるのは皆。

 なかたかな。

 私も招待状を貰って。


 きゅっ。きゅきゅる、

 きゅきゅるきゅきゅるきゅきゅる。


 金属の擦れ合う嫌な音。

 音がした方。また。私は振り向く。

 目を覚ましたときの、正面の方に。

 大きなモニターが降りてきて。

 きゅっ。と、止まった。


 っぷおおおおおおん。


 黒。の画面から。少しグレーになって。

 明るさをモニターが帯びた。


 【なかたかなのかいにようこそ】


 読み上げも、何もなく。

 白い文字で表示された。

 しばらくして文字が切り替わる。


 【げーむをします】


 ゲーム?


 【なかたかなげーむ】


 なかたかな。私達の。名前?


 【せいげんじかん30びょう】

 【えらばなければこちらでえらびます】


 制限時間三十秒。

 選ばなければ、こちらで選びます?

 何を?


 【30】

 【29】

 【28】

 【27】


 モニターの文字は消え、画面が九分割された。

 真ん中は今までの画面と同じで、カウントダウン。

 そして周りの八分割は、私達を、映している。

 私と同じく何が起きたか分からない顔。

 少しずつ、ざわめきが起きていく。

「あの」「すいません」「私いきなり連れてこら」

「あなたもなかたかなさん?」「私もです」

「なんなのこれ」「知らない人がいきなうちに来て」

「ねえおばあちゃん」「かなちゃん」

 …………

 そんなざわめきの中。


 【3】

 【2】

 【1】


 ぼんっ。と音がした。

 ぴちゃっと何かが背中に付いた。

 振り向くと。


 『カナ』と書かれたお婆さんの首から上が。

 なかった。

 上。

 頭が飛んで。

 私は振り返る。

 モニターには。


 【なかたかな→】



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