ただ一つ、それだけを君に願おう

白月

一歩目――少女の目覚め。旅人の邂逅。

少女の独白

 心とはなんだろう。




 ――感情とはなんだろう。




 ――愛とはなんだろう。




 ――喜びは? 怒りは? 哀しみは? 楽しさは?




 ――分からない。私には分からない。




 ――苦しみも、嬉しさも、親愛も、憎悪も、好きも、嫌いも。




 ――その全てを私は持っているはずだ。




 ――それなのに、私はその全てを本当の意味では知ってすらいない。




 ――中途半端に持っている分、余計にそれを求めてしまう。




 ――フール。あなたは知っているのでしょう?




 ――あなたについていけば私にも分かるでしょうか?




 ――あなたは言っていましたよね?




 「この広い世界には想像もつかないような、美しい光景が数多存在している。でもね、僕は思うんだ。人の心やその在り方は、稀にその全てを飛び越えて美しく輝く時がある。だから、人の心はこの世界のなによりも尊いものなんだって――」




 ――それを私にも教えるとあなたは言いました。




 ――だからひとまずは、あなたについて行くことにします。




 無骨な剣一つを背に負い、不思議な笑みを浮かべる青年と、機械の身体を持ち、偽りの心を有する、一体の少女の姿をしたアンドロイドの二人旅です。


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