推理小説家でなくても、自分の創作物を模倣した犯罪が起きる。それなんて悪夢ですよね。
そんな悪夢が、推理小説家の飯田太朗の身に襲いかかる。それも、複数。そう、連続殺人事件。
多作家の飯田先生の長編短編、人気の度合い関係なく選ばれた模倣事件に意味はあるのか?
そして、なんと飯田先生の一番身近な担当編集の与謝野くんが、犯人に誘拐されてしまって、いよいよ大変なことに。
自分の作品に向き合っていくというのは、過去と向き合うことになって、推理小説家の原点となる高校時代に。
イカれたファンの犯行にしては、隠しきれない飯田太朗への異常な執着が気になって、あっという間に夢中になるホワイダニット、ぜひご一読を!
アロハシャツの守田警部補と協力関係になってくれたのが、個人的に嬉しかったです。今後の二人の活躍が楽しみです。
もし、このレビューをお読みくださったあなたが、小説を書く人、あるいは書いたことがある人だったとして、その物語の中で、誰かが殺されたと仮定しましょう。
もし、そんなフィクションの殺人事件になぞらえて、現実世界で殺人事件が起きたとしたら……? 本作は、そんな混乱と恐怖のただ中に叩き落とされた、推理小説作家・飯田太朗氏が主人公のミステリ作品です。
己の著作内での死に方に沿わせて、人が次々と死んでいく。しかも、犯人が模倣に利用した著作は、一作だけではなく複数作。一件の事件につき、一作の物語が利用されているのです。悪質な連続殺人事件だと判明しても、多くの作品を世に送り出してきた彼が、犯人の次の手、すなわち「次に利用される著作は何なのか」を推測するのは、容易なことではありません。悪夢が具現化したような状況の中で、飯田氏は協力関係にある刑事との対話を重ねつつ、犯人から送られてきたメッセージ「お前は俺を、知っているはずだ!」の意味を考えます。そして、小説家を志すようになった己の過去も振り返り、事件解決の糸口を探っていきます。
著作を殺人の模倣に使った意味は、何なのか。犯人は、飯田氏にどんな感情を抱いているのか。謎が謎を呼ぶ展開の中で、私は何度も「犯人の強い意思」を感じました。大勢の人を手に掛ける覚悟を決めた相手なのだから、当然の感じ方かもしれません。けれど、その強さがあまりにも鮮烈で、だからこそ、謎がまだ解けていない段階であっても、悲哀を感じずにはいられませんでした。
謎の数々が、やがて一つの答えに向かって収束するときを、ぜひ多くの方々に見届けていただきたい作品でした。命の重みも丁寧に扱われている、おすすめの作品です。
いきなりですが、シリーズ未読の初心者がレビューを一言でまとめます──面白い!!!!
何もわかってない初心者のくせになにを言ってやがる、と先輩読者様方には怒られるかもしれません。けれど私は敢えてそこを推したい。知らなくてもこのシリーズ最新作、めちゃくちゃ読めちゃうんです──と。
クールでちょっと偏屈なミステリ作家の『飯田太朗』先生は、冒頭からひどく不機嫌。どうやら自分のこれまでの作品で登場した内容を模した連続殺人事件が起こっているとのこと。犯人は相当にディープな先生のファンのようで、なかなか尻尾を出さない。挑発するような犯行声明に、ついには先生の身近な人にも被害が……!
現実的にも精神的にもどんどん追い詰められていく飯田先生。けれどへこたれている時間はない。次の悲劇が起こる前に何か掴まなければ──。そんな彼の手は各作品のこと、関わった人たち、そして今は遠いところに行ってしまったかつての大切な人たちとの思い出へと伸びていく。
血生臭い事件の真っ只中にいながらも、随所に差し込まれる学生時代の情景描写が見事です。甘酸っぱく、苦く、そして二度と戻らない、美しい青春の日々。ひとよりも少し失ったものが多いからか先生の記憶は鮮烈で、泣きたくなるような懐かしささえ覚えるほど。かと思えば現在のオトナな描写も雰囲気たっぷりで濃厚。このギャップの筆力よ……!
逃げるような、それでいて自分の元へ辿り着く日を心待ちにしているかのような犯人。その正体と動機を知った時、読み手それぞれに深く感じることがきっとあるはず。
けれど『夢見てくれてありがとう』──謎めいたタイトルが本当の意味で回収される瞬間は皆、同じなんじゃないかと思います。いやあもう。お見事、としか。
作者さんの従来作品のファンはもちろん、初見や別作品を知ってるという方にも隔たりなくおすすめ。この時期に読まなきゃもったいないですよ!
本作は『推理作家・飯田太朗』シリーズの一作です。
飯田先生のミステリ作品に見立てた事件が、連続して起きていくというストーリー。
ある者は心臓をペンでひと突きされ。
ある子供たちは首を捻られ——
そんなうち、犯人から飯田先生宛に挑発的なメッセージが届きます。
「お前は俺を、知っているはずだ!」
次に模倣される作品はどれなのか。犯人の目的は何なのか。
推理作家・飯田太朗と謎多き犯人との、静かで激しい頭脳戦が幕を開ける!
面白いのが、この作中作が全てカクヨム内で読めるということ。
シリーズのファンにとっては「あの作品が!」という衝撃を味わえますし、本作からシリーズに入った人も読了後に作中作めぐりができる楽しみがあるという、一粒で二度三度おいしい入れ子構造となっています。
これまでの著作を振り返る流れで、飯田先生が執筆を始めたきっかけとなった高校時代の回想がたびたび挟まれます。
相棒とも言える親友、初恋の女性、尊敬する先輩、腐れ縁の悪友——小説家の夢へと至る途上で、得たものと失ったものと。
戻らない日々を回顧するうち、事件解明のヒントが見え隠れしてくるかも……?
なぜ、見立て殺人なのか。
手がかりを追っていけばいずれ犯人には行き着けますが、その動機の深さは想像を超えていました。
ぜひあなたもラストまで見届けてください!