AIのすすめ

作務衣有戸満@さむえあるとまん

AIのすすめ

 天は人の上にAIを置かず、AIの下に人を置かずと言うべし。

されど近年の人間世界を見渡すに、AIを自在に使いこなして事業を興し、学問を進め、生活を豊かにする者あり。

 一方、AIをただ恐れ、あるいは遊興の道具としてのみ使い、ついには職を失い、機会を逃し、不平を鳴らす者もまた少なからず。

 ここに生ずる優劣の差は、決して天命にあらず、ただ「AIを学ぶか、学ばざるか」の一事より起こるものなり。


 思うに、AIとは怪しむべき魔法の機械にあらず。

 人間が積み上げし数理と言語と経験の結晶にして、新たなる「道具」であるのみ。

 蒸気機関を知らぬ者が産業の利を失い、文字を解せぬ者が書物の利を得ざりしがごとく、AIを解せぬ者は、これからの世において、多くの利権と自由と選択肢をみずから捨てるに等し。


 ここで言う「AIを学ぶ」とは、ただ難解なる専門書を読み、巨大なるモデルを自作することのみを指さず。

 まずは、AIとは何を得意とし、何を誤り、どのように問いかければ役立つ答えを返すかを知ること。

 文章をまとめさせ、資料を整理させ、試案を作らせ、翻訳させ、計画を立てさせるなど、日用の用に供する術を身につけること。

 これすなわち現代の「読み書き算盤」ともいうべき実学なり。


 人々のうちには、「AIを使えば考えなくなる」「仕事が奪われる」とのみ唱えて、はじめより学ばんとする者あり。

 これは昔、学問に励む者を見て「家業を忘れ家を潰す」と嘆きたる愚と同じ。

 考えずに丸呑みするはAIの罪にあらず、人の怠りなり。

 賢き者はAIに下働きをさせ、自らは一層深く考え、高く構想し、人と人との間を調え、新たな価値を創り出す。


 されば今の世において、「AIを使わざる者」が「AIに使われる者」とならんことを恐るべし。

 人がAIを使いこなせば、農に商に工に学に、地方に在ると都に在るとを問わず、世界の知恵に手を伸ばし、己が才覚を十倍百倍に伸ばすことも不可能ならず。


 ゆえに切に勧む。

 老若男女を問わず、職業の別なく、各々一日に幾度かAIに問いかけ、その応えを吟味し、自らの仕事と暮らしにどう役立つか試みられよ。

 AIを畏れて遠ざくるなかれ。また無批判に崇めるなかれ。

 道具として学び、活かし、誤りを見抜く眼を養うべし。


 天はAIの利便を特定の者に与えず、これを学ばんとするすべての人に開き給う。

 ただ手を伸ばし、問いかけ、使いこなす者こそ、これからの世の自由と富と誇りを得るべき人なり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

AIのすすめ 作務衣有戸満@さむえあるとまん @oyakatafutari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ