フィレ肉

 接戦だった。


「フレェェェェェッシュ!……ピアがいない」

「ピアはアンタでしょう!」

「がおおおおお‼︎」


 ドゴン!

 梨王子の攻撃判断が遅かったせいでフィレ肉からの猛攻を食らってしまう。


「がは!」


 リンゴに二十のダメージが入り、


「ぎゃば!」


 レモンに二十八のダメージが加わり、


「おふ!」

「むお!」


 梨王子とブドウに十八と十九のダメージが与えられた。


「クソッ、相当叩いているはずなのに!」


 ブドウは焦燥感に駆られている。


「肉は叩くものさ」


 梨王子は爽やかにものを言う。


「なんで、どうして!」


 レモンもブドウ同様にもどかしさでいっぱいのようだ。


「だから肉は叩くもんだってば」


 またしても梨王子は長いまつ毛をさらりとさせながら言葉を吐く。


「オレの斬撃とレモンの魔法は効いてるぞ」


 リンゴは分析した事を伝えるが、


「君達、僕のことをのけものとはいい度胸してるね」


 梨王子が割って入った。


「オメェ、なにもしねぇだろうがよ!」


 リンゴは不満を露わにする。


「いつもバトルでは僕のフレッシュ・ピア……通称『FP』達が戦ってくれて僕は指揮をとっているだけなの!」

「だったら人にかまってないで大人しくしてろ‼︎」

「リンゴ!くるよ!」


 レモンの言葉に梨王子達は我に帰ったのか前方を見る。


「がおおおおおお‼︎」


 ––––素帝忌ステーキ

 爪が膨れ上がり爆誕した。

 ジューシーな煙が沸き立っている。

 ズバ‼︎


「が!」

「くん!」

「はほ!」

「むあ!」


 パーティは、三十五、四十二、三十、三十三のダメージを負ってしまった。


「……だから言っただろう。静かにしてろって」

「す、すまないね……でもね。こんな僕でもできることがあるんだよ」


 リンゴの言った事は全部正しいだろう。しかし、王子としての技量が試されるとしたら今しかない。梨王子は呪文を唱えた。


「カァァァァァニバァル・ピア‼︎」


 パァン。

 カーニバル・ピア。

 パーティ全員の攻撃力をアップさせるサポート系の魔法なのだ。


「なんだ、体の底から力がみなぎってくる感じだ」

「静電気でも最大威力を出せそう」

「先程は状況を考えろと言いかけたでござるが失敬」


 リンゴ達は梨王子に感嘆の声をかけた。


「エヘヘ」

「その顔キモい」


 調子に乗り笑う梨王子だったがレモンからつんとした言葉が放たれた。


「がくー」

「行くぞみんな!スイカの弔い合戦じゃー」

「おー‼︎」


 リンゴの合図でパーティがフィレ肉に飛びかかる。

 その勇姿たるや猛牛の進軍の如し。

 パーティ全員の会心の一撃が放たれる。


「どりゃー」


 リンゴはスイカとの出会いを思い出す。

 群青だスイカ。あの空の色は群青だった。そしてオレ達も。青かった!


「てーい!」

 レモンは内心ではスイカのことを憐んでいた。

 マンゴー王女に吐かれていて草ワロタ。あとで慰めといてあげよー。


「ござる!」

 ブドウはスイカと自らを重ねようとしている。

 無念……。無念でござったスイカどの。そしてそれを笑う自分が恥ずかしい。


「みんながんばれー」

 梨王子は後方支援に徹していた。

 フーフフーフフーン。僕ってカッコいい?


 ドン‼︎


「がああああ‼︎」


 フィレ肉は苦しんでいる。


「やったか!」

「香ばしい香りがする」

「まだでござる!」


 パーティの目の前にいるフィレ肉はまだ倒れない。


「がおおおお‼︎」


 ザバ‼︎

 その一撃は今までパーティが攻撃してきた効果で肉の面積が広がったフィレ肉の最大限の斬波だった。


「ぐわぁぁぁ‼︎」

「きゃぁぁぁ‼︎」

「あはぁぁぁん!」

「ぬぐぅぅぅ‼︎」


 パーティに大ダメージが入ってしまった。

 前衛にいたリンゴ達が主にその餌食となってしまう。そしてHPがゼロになってしまったのだ。


「がっ……スイカ」


 スイカ……すまねえ、冷たい態度とっちまった……


「うぐぅ……」


 嘘でしょ、ここで終わり?スイカ、落としたかった……


「無念……」


 レモン、レモン、レモン、レモン、スイカ、レモン……


 ドサッ。


 三人は倒れてしまった。


「ん〜、アレッ、みんなー・・・・・・」


 ひとり立ちすくんでいる梨王子の目の前ではグルルルと唸り声を上げているフィレ肉がいた。


「HA HA HA、弱っているね。僕が相手ニ降参!」


 すたこらさっさとその場を去って行った。


「がお」


フィレ肉の目の前には勇者スイカがなにやら夢見心地でいた。

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