愛のない政略結婚、奔放な父、去っていった母。
そんな歪な家族関係の中で育った主人公が、社交界で出会った一人の女性に心を奪われる――ここまでは一見ロマンスの導入のようでいて、物語はそこから思いがけない方向へと進んでいきます。
本作の魅力は、「恋愛」だけに焦点を当てていないところ。
貴族社会という世界のしがらみ、家同士の思惑、莫大な資産を巡る不穏な空気。
そして突如起こる事件によって、物語は一気にサスペンスの色を帯びます。
恋愛、家族、義務、陰謀が複雑に絡み合う中で、主人公が迫られる『守る』ための選択。
彼の決断のひとつひとつの重さが、読み手の胸にもずしりと響いてくるのです。
そして気になるのは、このタイトルが示す言葉の意味。
「愛しいと想うことさえ許されず」という想いは、これからどのような形で回収されていくのか。
誰の感情なのか。どんな結末へと繋がるのか。続きがどうしても気になります。
愛と責任が絡み合う、逃れられない宿命の物語。
重厚な展開をじっくり楽しみたい皆様におすすめしたい名作です。