僕の四半期

ぴかぷぅ

第1話 自我の目覚め

14歳の頃に僕はゲイに目覚めた。きっかけなんてなく、気がつけばふくよかな体型の同級生を目で追っていた。それまでは女の子に対して恋愛感情みたいなものがあったはずだが、その時の僕は戸惑うこと無く男の人が好きだという自分の気持ちを受け入れた。 


当時のテレビではおすぎとピーコと言われる所謂オカマ達が良く出ていたが、自分が抱いてる感情とは少し違うなと感じていた。


そんなある日の夏休み、従姉妹の家で遊んでいた時に僕は机に置いてあるレディースコミックになんとなく手を伸ばした。もともと漫画を読むのが好きだったし、従姉妹が集めていた単行本を良く読んでいたからだ。パラパラとページをめくり楽しそうな漫画や好きな作家の作品はないかなと探していると、中表紙辺りにSAMSONというゲイ雑誌の特集記事が小さく書かれていた。いま思えば本当に偶然だ。[デブ専ゲイ雑誌]と書かれたSAMSONという本の紹介文や、デブ専というまるで魔法みたいな言葉は僕の中で輝き始めた。それもそのはずで、当時気になる同級生が居たが、この気持ちに対しての対応がわからず苦しんでいたからだ。数日後、僕は勇気を振り絞って地元の本屋でその雑誌を注文した。僕の家は飲食店とスナックを経営しており、近所には知り合いの大人達が沢山いるので、もしかしたら店員も僕の事を知っているかもと不安に駆られ、本屋の近くを何度もウロウロし中に入れずにいた。


勇気が出せないま数時間が過ぎた頃、僕は偽名を使い電話で注文すればいいんじゃないかと閃きすぐに実行に移した。近くの公衆電話で、尚且つ他の人に会話が聞こえないようBOX式のものを探し本屋に電話をかけた。電話に出た店員にSAMSONを注文し、自分の名前ではなく偽名を使い注文。たった数分間の、これだけの事を終えた僕は緊張から解放されてホッとした。概ね一週間後には入荷するとの話だったが、待つ時間はそれよりも酷く長く感じた。同級生への思いも募るなか注文から一週間が過ぎていた。本を受け取りに行った際まだ来てないと困ると思い、本屋に行くのは二週間後にした。それでもやはり恥ずかしいので、本屋の店主に予約した本を受け取る時は、友達同士の罰ゲームで負けて誰かに買わされた様な下手な演技をしていた。購入後は誰にも見つからないようにすぐに鞄にしまい、急ぎ足で本屋を出て家路についた。家に帰り自分の部屋へ行き本のページを急ぎ早にめくる。1ページ目から素敵なグラビアが踊り、僕の興奮は高まるばかりだった。読めば読む程にぽっちゃりした野球部の友達や太ってる同級生への淡い想いが膨らんだ。雑誌の中の物語や写真は僕の心をますます掻き立て、自分自身を慰める毎日が続いた。両親には言えない思いを抱えながら。


同じ雑誌を何度も読み興奮も薄れた頃、家族旅行で下関に行く機会があった。大きな都市に行けば新しい物が売っているかもと期待し、家族旅行で下関に行った。下関駅の側にあるシーモールという大きなデパートの本屋に、偶然にもSAMSONは置いてあった。僕は迷わず購入し、自分の鞄にしまった。その後の事は良く覚えて無いが、バレずに自宅まで持って帰ったのは覚えている。それからは新しいSAMSONに随分とお世話になった。やがて春が来て中学を卒業する季節になる。好きだった同級生は地元で有名な進学校に行くらしく、合格ラインギリギリだった僕は万が一もあると思い受験したが落ちてしまう。だがまるで運命かのように、滑り止めで選んだ高校の担任はお腹が突き出て身体が全体的に丸く、凄く太った先生だった。その先生は担任の他に数学を担当しており、授業以外でも会う機会は多かった。授業中でも先生を見る事ができ嬉しかったが、先生に気に入られたい一心で僕は数学の勉強を頑張っていた。母親の勧めで数学だけの塾に行くことになるという偶然も重なり、改めて数学の勉強をすると意外と面白く実力がめきめきとついていった。そのおかげもあり、大好きな担任と二人で良く話す機会が増えていった。先生は数学の授業中に皆が解けない様な問題を出すことがあり、みなが解けずに苦しむなか僕は先生に方程式の証明をしながら解くと凄く嬉しそうな笑顔で褒めてくれた。それもあったのか、授業以外でも何かと声をかけてくれるようなった。放課後も遅くまで数学の勉強に励んでいた時は、車で家に送ってくれたりいつも笑顔で話してくれた。僕は先生の笑顔見たさに、数学を特に頑張る様になっていた。


僕が高校に入学したての頃、三年生のクラスに眼鏡をかけ小太りで童顔の先輩を見つけた。いつも見かけるだけで接点などまるで無かったが、この高校は全クラス対抗のスポーツ大会が毎年あり、なんと僕が出場する卓球にその先輩も出場してた。普段は制服姿しか知らなかった僕には丸々とした身体に体操服を着て、卓球のダブルスを組むであろう友達と楽しそうに話す姿が眩しく見えた。僕は先輩の笑ってる姿や友達とじゃれあってる姿を見てるだけで幸せだった。先輩のプレーの一つ一つを目で追い、対戦相手となった同級生に無駄に大きな声をかけ先輩の気を引こうとしたりした。もちろんこの行動は無意味に終わるのだが。スポーツ大会ではやはり二つ年上という体格差もあり負けてしまい、勝ち進んだ先輩も次の試合で負けてしまった。先輩は友達と教室に帰ってしまい、僕は体育館に残る意味も無くなったので友達と教室に戻り話して遊んでいた。先輩が卒業する季節がやってきた。僕はどうしても思いを伝えたく、先輩の机の引き出しに自分の想いを伝える為に一生懸命考えたラブレターを入れた。


ありえない事だけど、僕の気持ちに答えてくれるかもしれないと待ち合わせの場所や時間なども書いて。もちろん当日その場には怖くて行けなかったけど、もし先輩が来てくれていたら僕は告白出来ていたのだろうか?そんな高校生活の中、二年生の頃だろうか悪友たちと夜中に集まり遊ぶ機会があった。放課後に外で皆で遊び、夜はどんどんふけていった。時計の針が21時を指した頃に、何故か僕の家に泊まろうという流れになった。あまり気乗りはしなかったが、少しぽっちゃりした気になる友達も行くと話したので、僕は了承した。 僕の家では、外に居た時と同じ様に下らない話で盛り上がっていた。 そろそろ寝ようかという流れになり、自然に僕は彼の横で寝る場所を確保していた。皆が眠り始めた頃に、僕は彼の腕に包まれるようなポジションで休んでいた。彼の寝息や普段感じる事がない温もりで眠気より興奮が勝り、全く眠れず悶々とする時間が流れていた。その後はあるきっかけで、すぐにみんな解散となるのだがそれは機会があれば話す事にする。


そういえばその頃、小学校からの親友に好きな女の子が出来たらしく、その子に告白してもいいかと言われたことがあった。何でそんな話をしてくるんだろうと考えるも女性に興味がない僕は、良いんじゃない?と答えたと思う。彼は半分笑いながら半分本気で僕を何度も叩いてきた。何するんだよと僕は抵抗したが、後で知るのだがどうやらその女の子は僕の事が好きだった様で親友である僕がその女の子の事を好きだったら身を引こうと考えていたのかな?もちろん僕は太った男の人が好きだと自覚してたので、例え告白されても断っていたが。恋というのは不思議と連鎖するのか、その頃は同じクラスの友達と恋ばなをする機会が増えていた。僕も好きな人が居ると彼に話し、相手は僕達と良く話していた女の子と告げだ。その頃の僕は女性に興味があるふりをしていた。周りに自分が普通の男だと思わせたいが為に。


友達との話の流れで僕は告白する事になり、休みの日にその子を呼び出し夕暮れの中告白した。返事はもちろんゴメンナサイだった。後で知った事だが、彼女は僕の友達の事が好きだったみたいだ。


そんなことがありゲイである僕にとっての高校生活は、普通の人よりも色々と発散しきれない日々が続いたと思う。


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