2-5 新竜戦②
「知っているとは思うけれど、こちらはサルダット卿。サリーさん、こちらがテルビナの調教をしてくれている、エムリスくんだよ」
ベレー様は僕に隣の男性を、隣の男性に僕を紹介される。サルダット・タルギサガス様。大帝賞でベレー様と
「はじめましてサルダット様。ご紹介に
「うん。今日はよろしく」
僕の挨拶に、サルダット様はそう応じられる。しかしその返事は妙だった、
「『よろしく』――というのは」
僕は思わず訊き返す。
「ああ。今日は乗るために、ここまで来たからね」
サルダット様の返答はそうだった。依然、妙であることは変わらず、
「先週、ザールカーフ号に騎乗され、見事勝利されたと聞いておりましたが」
僕は続けて尋ねてしまう。
「おや。――ザールカーフの担当は新人だったかな。君の知人かい」
その返された質問に、僕は頷く。
「まあ。今日も、僕が乗ることになったから、よろしく、というわけだよ」
彼はそうまとめられた。恐らく、話の筋としてはこうだ。今年の二歳竜、サルダット様が騎乗されるのは基本的にはザールカーフ号。しかし、一人の騎手が一頭に乗り続けなければならないという規則はないし、一頭の竜は一人の騎手によって乗り続けられなければならないという規則もない。既に騎乗を決めている竜で勝利したのに、まだサルダット様が乗られるというのは、恐らく、今日の竜の竜主様のご意向で、その竜に、新竜戦に勝ったという実績を与えたいのだろう。新竜戦に一回勝ちさえすれば、重賞への出翔権は最後まで剥奪されることはないし、
「そろそろだね。ではまた後で」
ベレー様はぴっと手を挙げると、独りでこの場を立ち去られた。お会いしてからずっと湛えられていた微笑は消えている、ここからは集中
〖――990年萌芽月、帝立第三競竜場、第1回新竜戦。出翔竜を紹介いたします。
1番ダウエン、ハバル・フィダール様。
2番ガラン、サルダット・タルギサガス様。
3番ドゥルドゥルドゥル、ワット・タタラ様。
4番ヤチルテルビナ、ベレー・ハイジン=ハスト様。
5番バラック、エルヴァデ・ハロルバロル様。
6番ジラハルハブズ、ボード・アンナイム様。
魔力提出が完了するまでしばらくお待ち下さい――〗
重賞
〖――
無機質な声がそう告げた。
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