第6話


「なんで水辺に行くんだ?動物を狩れるなら、その血を飲めばいいだろ?」

「……野蛮」

 美緒がそうボソッとつぶやく。


「理由は簡単に二つ、継続した水分と肉の鮮度維持が一つ目の理由。そして二つ目の理由が、継続的な動物の討伐かな?動物も水分が必要になるでしょ?だから、川の水を飲みに来る動物を殺す。そのためにも川は知っておきたいかな。他に何か質問ある?」


 誰も何も言わず、静かな空気に変わる。

「話の続き、移動する時なんだけど、剣で草を切れる?」


 座り込んでいた優香が立ち上がり、草を切る。

「特に問題ないな」

「それなら、移動するときに草を切って欲しいんだ」

「理由は?」

「スライムを踏み抜かないため」

「了解」

「で、見つけた瞬間、声を出して次の行動を伝えること。その動きに合わせて俺たちも移動できるから。ほら、目の前にいる人が急に止まるとぶつかるでしょ?あんな感じ」

「?ああ、わかった」


(わかっていないな……。まあ、これをしてくれればいいか)

 そして、他の決め事をしていた時だ。


「よし、みんなパーティーを組んで、今後の方針を決めたよな?スライム討伐に行くぞー!」


 そう言った後、何も策を立てることなくサッカー部の部長は奥に進んでいく。それに大勢の人たちがついていくのだった。


「どうする?」

「反対方向に行こうか……。あそこでスライムの取り合いをしてもね」


 この指揮を取っていたサッカー部部長の反対側に進む。


 優香が先頭に立ち、草木を剣で切り分けながら進む。わずか数秒後のことだ。スライムを見つけた。


「危な!」

 草木の影に隠れており、視界を確保しながら進むことで、スライムを踏み抜く心配はなかった。だが、切ることを怠っているとスライムに絡みつかれ、口を防がれていただろう。


 スライムを見つけた優香は後ろに振り返り、

「下がれ!」

 と声をあげる。


 その声を聞いた悠馬と美緒は後ろに下がり、優香が下がることができる隙間を開ける。そして、優香が後ろに下がってきた。


「検証を始めるよ。どっちからいく?」

「行くね」


 美緒は持っている杖の先端をスライムに向け、魔法を発動する。

「ライトボール」


 その作られた光球が、スライムの体に当たり、スライムの体の一部を奪い取る。

「やっぱり魔法が効くみたいだよ!」


 自分の予想が的中したことに喜んでいるようだ。

「ライトボール」、「ライトボール」、「ライトボール」


 とスライムに命中するたびに、すぐに魔法を作り出しスライムに向けて魔法を放つ。と、ライトボールを六回放ったタイミングだった。スライムの体が光りだし、ドロップへと変化を遂げる。


「なんだこれ?」

 そう言いながら、優香が近づき、剣でそのドロップしたものを突く。それは石のような何かだ。石のように丸く、黒いためそれが何かわからない。

「魔石かもね!」

 美緒が近づき、優香が持っていたスライムからのドロップを奪い取る。


「おい、それは私が取っていたものだぞ」

「倒したのは私だし!」

 そんなことを言い合いながらスライムのドロップを取り合っている。


「美緒、レベルは上がっているか?」

「あ、確認するね」

 奪い合っていたドロップ品は、優香の手に渡る。


「レベルはまだ上がってないよ。あ……、これは言うべきだね。ひとつ言うべきことと、次のミッションのネタバレになるけど、大丈夫?」

「攻略になるのなら別にいいだろ」

「同意」

「それがね——パーティーを組めるんだって……」

「まじかよ……」

「パーティーってなんだ?食事会でもするのか?」

「パーティーってのは経験値を共有する特権や、グループですよって表現するための名称?って言ったらわかりやすいかな?」


 そう言いながら美緒は悠馬の顔を見ている。この説明した内容が本当に正しいのか、あるいは間違っているのかを教えてもらいたいのだろう。

「まあ、一緒に行動する仲間って考えてればいいんじゃない?」


 肯定もせず、否定もせずに答える。

「一旦パーティーでも組んでみるか……。どんな効果があるのか分かりやすいだろ。招待って送れるか?」

「ステータスを開いてみて?」


 二人ともステータスと唱え、開いてみた。

「やっぱりダメだった。……多分だけど、スライムを討伐しないと駄目なんじゃないかな?」


「スライムを倒すのが条件なのはわかったけどよ。剣士にスライムは相性が悪いんじゃなかったか?」

「まあ、悪いけど戦闘に参加したらクリア判定の可能性もあるから、そこを確認してみる?」


 剣士とスライムの相性が悪いことはわかっている。トドメを刺さずとも、倒すことに関与することで、倒した判定になるのでは?と美緒は代案を出す。


「ってことは俺がスライムを討伐する時に試すって感じか。俺は別にいいぞ?その攻撃手段は石での投擲でいいか?」

「ああ、それで頼む」

「そのあたりに適当な石ってある?」

「これなんかどうだ?」


 そう言って、スライムがドロップした石を優香は見せつけてくる。

「ありだけど、少し勿体無いような気がする?」

「いや、ありだと思う。ほら、魔石の定番に魔力が込められているとかあるだろ?で、スライムは物理防御が高い。魔石が魔力攻撃判定になる可能性はどう?」

「ありだとは思うけど、それは最終判断にすべきだと思うよ」

「とりあえずは、攻撃の関与から試してみるか。その前に石とスライム探しから始めようか」


 スライムを見つける前に、まずは石を探すことから始まる。

「これなんかどう?」


 そう言いながら一つの石を優香に向かって投げる。投げた石を彼女がキャッチし、軽く掌に収めた。

「これなら投げやすそうだ」

 優香が満足そうに頷く。


「あとは、念のためにもう一個石ってことか」


 手に馴染む石をもう一個見つけ、その石を美緒が持つ。

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