第2話 ツナと土蜘蛛 ②
※ この作品は素人による拙い文章の空想創作物語です。また表現も現代風に変えている事をご了承下さい。
洞窟を進むと僅かだが臭気が漂っている事に気がついた 袖を鼻にあてがい洞窟の奥へ松明を照らす。
「開けているな……西の山でこの洞穴を見つけてから かなり刻が経ったはず……多分……」
目を凝らすと奥の方で幾つかの魂のような灯りが光っている。
慣れた感じで奥へと進み 開けた場所に出ると そこはかなり広い空間であり 魂の光と思っていた正体は眼だった! 大蜘蛛の眼!
ツナは懐にある簡易の松明全てを出し 火をつけ回りに投げた 松明の灯りに照らされ 大蜘蛛の姿がハッキリと認識できた。
デカイ!大きさは約30mぐらい 高さは10m〜15mぐらいあろうか。
「火は恐れないのか」
辺りに散らした簡易松明の炎には平然としている大蜘蛛。
その時 ツナの癖で素朴な疑問が浮かんでしまった 「糸は吐くのか?」 「 吐くのなら尻からか?」 「口からか?」 辺りを見回すと蜘蛛の巣らしき物は張られてはいない。
ツナは腰の太刀をゆっくりと半円を描くように抜き構える。
「しくじったな 半弓を持って来るべきだった」
大蜘蛛は構えたツナを見て敵と認識したのか 巨大に似合わない速さで突進してきた。
ツナは慌てて元来た狭い洞窟の入口に入り込んだ。 大蜘蛛の体当たりに洞窟全体が揺れた。 折れ烏帽子を押さえ身を屈めるツナと 幾つかある大蜘蛛の眼のひとつが合った ツナはその眼に太刀を突き刺すと 大蜘蛛は甲高い まるで女性のような叫び声を発して後退った。
「いつ聴いてもゾッとする叫びだな……それよりお前凄いな…この臭気 既にものの怪から魔物に変わろうとしてる どれ程の魂や ものの怪 魔物を喰ッたんだ……」
ツナが再び入口から出ると少しバランスを崩してしまう 大蜘蛛と洞窟の天井 壁面しか注意して見ていなかったが 改めて地面を見てみると 岩か土と思っていた物が 驚く程多くの人骨であり 辺り一面無造作に敷き詰められていた。
「ウワッ! お前 人外の者だけでなく よくこんな穴倉で これだけの多くの人を食ったな! そりゃ魔物にもなるワ!」
場所は変わって東三条の森。 聞いたことが無い不気味な動物の鳴き声がする中 折れ烏帽子に大鎧姿の頼光と同じ姿の卜部 碓井 坂田 他配下40人程が松明の灯りを照らし進んでいた。
配下の者達は不気味な鳴き声を「これが鵺の鳴き声か?」と小声で囁き合い 坂田は大鎧が動きづらいと文句を言う。
「ナベさんは鎧など着ずに 狩衣姿で行っていたのに……」
「まぁまぁ ツナはツナ!我らは我ら!」
坂田をなだめる頼光が立ち止まると 前方上空を見あげた その目線の先から黒煙が立ち昇っていたのだ。
黒煙を確認した卜部はみなに命令を発した。
「敵が近い みな太刀を抜け!」
「季武 松明も捨てよ 此処よりは月明かりで進む!」
頼光の命令に緊張が走る。
森の奥には古い荒れ果てた屋敷があり その前で大きな焚き火をしている一団がいた。 鵺一党である。屋敷の入口前であぐら座りして酒を飲んでいる頭目の猿女。その横には猿女に酌をしている女性 副頭目のウワバミ。 焚き火の回りに個々の集団を作り その中心にいる親分クラスの1人 巨漢のムジナ。 顔中キズだらけの虎髪。 左目が潰れている寅目。 抜いた太刀の刃に酒をかけている寅爪。 猫背に上目遣いでジッと焚き火の炎を見ている寅岩。 その者達をそれぞれ囲むように約100人程の手下が「次はどの村を襲う」「どの公家の屋敷を襲う」などと口にしては酒に酔いしれている。
そんな鵺一党を目視した頼光軍は いよいよ緊張が増してきたがそれを壊す事を言うのが坂田である。
「一体何を燃やしたら あんな黒煙が出るんだ?」
「油じゃないか?」
冷やかに坂田と碓井の会話を聴く卜部は 2人を無視し頼光に話しかける。
「頼光様 斬り込みますか?ご下知を……」
「ヨシ 儂はあの頭目を 傍らのオナゴも一味ならば斬る 金時はあの巨漢 季武 貞光は囲いの中心にいる者 他の手下らしき者どもは みなで頼む!これ程近づいても気付かぬ輩だ 数では負けるが武勇ではこちらが上 一切の容赦はするな全員斬り捨てよ!……いざ かかれ!」
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