第13話 二人の家

 私と羽山さんはお互いの気持ちが通じ合って、恋人とまではいかないけど、ただの同じ会社の社員同士以上の関係になった。


 なってしまった……。


 でも、私と羽山さんは上司と部下。

 この関係は絶対に秘密にしなければならない。

 社内恋愛がバレてしまった場合、運が悪いとどちらかが異動になる場合もある。


 だから、リアルではなるべく慎重に動かないといけない。


 ──だから


 土日のハヤテとあまるは、朝から晩まで休憩を挟みながら遊んでいた。

 ストーリーが一気に進む。

 ストーリーの大きな展開に二人で驚きながら、子供のように無邪気にワクワクしながら進めている。

 リアルを忘れてゲームに没頭していた。


 次の日が休みの場合は夜更かしして遊んで、昼くらいまで寝て、起きた方からまたゲームに戻る。

 ダラダラ二人の自由気ままに。

 今羽山さんはどんな服を着ているのかとか、考えたりしていた。


「おはよ〜」とか「ただいま〜」とか「おかえり〜」と挨拶をお互い言う度に、ここが特別な場所に思えた。


 用事があって何時間かいない時、何してるのかなーって気になった。

 聞かないけど、だんだんとハヤテのリアルが気になる。

 同じ会社だけど、仕事とゲーム以外はよく知らない。


 ハヤテの姿を見ながら、羽山さんは今どんな顔をしているのか考えていた。


 ◇ ◇ ◇


 その日、羽山さんのデスクの近くに新人の葉月さんがいた。

 それを見たら少し心がざわついた。

 葉月さんの見せた資料を見ながら、羽山さんは何かを説明していた。

 少し葉月さんが微笑んだりして。

 嫌な気持ちが湧いてくる。


 これは、羽山さんが上司として当然の行動をとってるだけで、私だけが特別扱いというわけではない。


 戻ってきたら葉月さんは、心なしか嬉しそうだった。


 複雑。


 でも耐えないと!


 その後、オフィスのフロアの片隅で風景を見て気を紛らわせていたら、羽山さんが来た。


「どうした?」

「ただ景色が見たくなったんです」


 新人の女の子に嫉妬するなんてみっともない……。


「今日の夜、あっちで相談したい事がある」


 あっちとは、エタクエかな?


「じゃあ、また」


 羽山さんは少し微笑んで行ってしまった。


 なんだろう?


 ◇ ◇ ◇


 夜にエタクエにログインすると、ハヤテに驚くべき相談をされた。


 ハヤテ『家を買おうと思う』


 家???


 あまる『どこで買うの?』

 ハヤテ『チュートリアルで説明あったよ』


 ゲーム攻略に関係なさそうな事はスルーしていた。

 ハヤテはちゃんと覚えていて、ずっと場所を探していたみたいだった。


 家があるメリットを聞いたら、アイテムを沢山ストックできる事、寝起きができるから回復ができる事、敷地内を自由にコーディネートできるなど、色々あった。


 アイテムがストックできるのは大きい…!

『私も家買う!』と言おうとしたその時──


 ハヤテ『一緒に住もう』


 と言われた。


 予想外の話に激しく動揺した。


 あくまでゲームの中だけど、

 一緒の家に住むって、

 それは照れる……。


 でももう、ハヤテは二人で住む方向で考えていたみたいで、あとは私の返事待ちだった。


 そんなの、断われるわけがない!


 一緒にこれからも冒険したい。

 一秒でも長く一緒に居たい。


 だから私はハヤテに言った。


 あまる『これからもよろしくね!』


 ハヤテはその返事をしたら、すぐに家を買った。


 あまるとハヤテは、旅の相棒から、同居人へとレベルアップ?した。

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