#13 匂いのトリック解決篇 Part.3

【妄想犯行計画】は、

 創作世界の物語です。

 この物語はフィクションです。

 実在の人物、団体、事件、出来事とは一切関係なく、すべて架空の世界の出来事と事件です。


 妄想犯行計画 未来を掴む推理ゲーム

 #13 匂いのトリック 解決篇 Part.3



 前回の終盤。

 五感再現仮想空間【妄想犯行計画 ほこやぎ町】で、資産家であり匂いの特異体質を持つ金餅 良緒かねもち よしおさんが、自宅邸内の書斎室で――命の灯火が消えた状態で発見された事件。

 

 萬屋記録局よろずやきろくきょくで、局長の【萬屋 赤葉よろずや あかは】さん、赤葉さんの姉であり警察キャリア組の【萬屋 八色よろずや やいろ警視】、ほこやぎ警察署に勤務するスキンヘッドの刑事の【明堂 真めいどう しん警部】と局員である僕――森咲 杜鷹もりさき もりたかは、金餅さんを殺めた犯人についての推理の擦り合わせの終盤に差し掛かっていた。


 プルル!プルル!


「――こちら、明堂……そうか、分かった」

「モリサキ――解析班からの報告だ」

「スマホのデータの中に【ホシと男が言い争い】をしている録音データが入っていたそうだ」

「つまりなんだ、お前の読み……怖いほど当たってる――」

「モリサキ、お前――何者なんだ?」


 明堂さんの質問に僕が一般人――と答えたところで終わったと思う――

 それでは――【仮想の五感探偵】――森咲 杜鷹の推理の続きを聞いていただこう――


 

【202X 1月X日 PM23:00】

 【ほこやぎ町 ほこやぎ警察署 会議室】

 【残解決時間 152時間】

 

 西坂さんのアパートのゴミ捨て場で――捨てられていたスマホの【削除された音声データ】を復元したという鑑識からの電話報告を明堂さんが受けたあと――

 赤葉さんと僕は――明堂さんと八色さんと共にすぐに【ほこやぎ警察署】に向かった――

 

 一般人である赤葉さんと僕に、警察組織が事件の【重要証拠品】である【音声が復元されたスマホ】を見せたり音声を聞かせることなんて、当然のことではあるが――あってはならない――

 例え、赤葉さんが八色さんの家族であったとしても――

 

 その代わりに僕は、今回起きた事件の当事者の1人として――すれ違った2人の顔写真と事件当時の邸内入り口に設置された、【防犯カメラ】の映像を特別に――八色さんから見せてもらうことができた――


「モリタカ君――どう?」

 ――どうと言われてもな……ん?


 防犯カメラの映像に映る、赤葉さんと僕が――すれ違った2人の家政婦さんの【違い】を見つけた僕は、八色さんに【ある疑問】について問いかけをしてみた――

 

「八色さん――後から僕とすれ違った人は、マスクをしていないみたいなんですが――なぜですか?」

「――マスクをしていない、後からすれ違った人?――その人は、西坂さんね」

「彼女……強烈な匂いだけを感じない――特異体質らしいわ――」

「強烈な匂いを感じない特異体質……」

 

「――だから事件当日、金餅さんが書斎室にいた時間――」

「換気システムによって【吸気状態】となっていた食室のオープンキッチンで、【臭い干物】を焼くことができたんですね?」

 

「――モリタカ君、私は西坂さんじゃないのよ――」

「それを本人から聞き出すのが――【キミの役目】――それが、我々が求めている【確たる証拠】――」

「頼んだわよ、モリサキ モリタカ君――」


 【202X 1月X日 PM0:00】

 【金餅かねもち邸 客間】

 【残解決時間 139時間】


 赤葉さん、八色さん、明堂さんと僕は今、金餅邸の客間にいる――

 そして金餅さんを殺めた人物である【西坂 花鈴】さんも僕たちの目の前にいる――

 

「――というのが、僕の考えです……西坂 花鈴にしざか かりんさん」

「あなたの【計算された犯行計画】と【計算されたアリバイ】は、完璧でしたよ――」

 

 西坂さん……いや妄想犯行計画の相手プレイヤー暴かれる側が作り上げた【計算された犯行計画とアリバイ】は、完璧のはずだった……ある【ミス】さえなければ――

 

「――まさかそこまで、私の計算を逆算してくるなんて――あんた、何者?」

「僕ですか?――萬屋記録局の森咲です」

「だからかな……自称【街の記録人】の萬屋 赤葉が、最近――妙なことやり始めた――」

「――話を金餅のじいさんから聞いたことがあったわ――」

 

 かつて――想いを叶える存在【刻想器】だった小蒼ちゃんが、【萬屋 赤葉の事件帳】のファンである僕と【ハッピーエンドを掴む】、【想いの契約】をしたことで作り出した――事件帳の舞台【ほこなぎ町】ではない【妄想犯行計画 ほこやぎ町】――

 だから街の記録人という【フリーター探偵】だった赤葉さんも、表向きは八色さんの支援という自然な形で――萬屋記録局の局長になっていた、ということなのだろう――

 

「私のこと……いつから疑ってたの?」

「それは昨日――あなたと最初にすれ違った――時です――」

「はぁ?――あの時、東絵さんもいたじゃない」

「……あなたの制服、シミがついてましたよ、西坂さん――」

「昨日、金餅の爺さんが朝食後に書斎室に行った時――」

「私は、【昼食準備】のために【キッチン】で――干物を焼いたからね……あ――」

「――西坂さん……僕は、【シミ】がついていたとしか言っていませんよ」

「なぜ、あなたがあの時間に【昼食準備】のために【干物を焼く】必要があったのですか?」

「――それは…………」

「――西坂さん……あなたの【犯行計画】のラインとラインは、繋がってしまったのです!」


 そう……僕が嗅いだ――【残り香】の匂い。

 あれは昨日の朝――赤葉さんと僕が邸内に入る直前、至近距離ですれ違った――東絵さんと西坂さん、どちらかの【残り香】だった――

 あの時間――赤葉さんと邸内に入った時、金餅邸の邸内は【K.S換気システム】によって、全て換気状態になっていた――それは西坂さんが、K.S換気システムで設定していたのだから――邸内に【残り香】があると言うのは不自然――

 だからこそ、昨日の夜――僕は八色さんに防犯カメラの映像を見せてもらった。

 確たる証拠である【殺めた人物しか知らない情報】を本人から聞き出すために――


「――それも計算して来るとはね……」

「そう私が全て、金餅のじいさんを確実に殺めるために――【計算した計画】――」

「スポンジと皿を残したのも北宮さんに表せるため――オープンキッチンに来た東絵さんが【臭い干物】の匂いですぐに食室から出て行ったから――」

「――私も演技した――ただそれだけ」

「K.S換気システムの網膜登録の件は、私は網膜登録されこと自体、知らなかった――」

「映画に出てくる未来的な設備があること自体、不思議だと私は思った――」

「私が――金餅のじいさんを――」

「はい、そこまで――」


 西坂さんが――金餅さんを殺めた動機を言おうとした時、八色さんが止めに入った――

「西坂さん、どんな理由があろうと――1人の命の灯火を消したあなたは、法で裁かれないけない」

「話の続きは――ほこやぎ署で聞くわ――」

「――明堂くん、お願い」

「了解しました!萬屋警視」


 西坂さんが――八色さんと明堂さんに、連れて行かれる直前、赤葉さんが西坂さんにある言葉を投げかけた――


「あなたの気持ちはわかる、理解できない訳じゃないわ――」

「殺める以外の【色々な選択肢】も選ぶこともできた――」

「それなのにあなたは、金餅さんを殺めるという選択をしてしまった――」

『結果、【モリタカ】に暴かれた――それだけのこと――』

『モリタカが話した通り――途中までは完璧だったわ――」

「――でも、あんな強烈な匂い放つ【干物】をトリック選んだ時点で、あなたの運命は決まっていた――』

『――【一滴のシミ】という致命的ミスが、招いた結果なのよ――』


 シリアスなスイッチが入った【ほこやぎ町の赤葉さん】は――僕がファンになったキッカケである【萬屋 赤葉の事件帳 】の【ほこなぎ町の萬屋 赤葉さん】のシリアスなスイッチなままだった――

 ――画面を通してみるよりも、当たり前だが迫力が違いすぎる!


 こうして【匂い】を計画的にトリックとして利用した【西坂 花鈴】さんは――八色さんと明堂さんに【ほこやぎ署】へ連れて行かれた――


 【ステージ1 匂いの妄想犯行クリア!】


 西坂さんが連れて行かれたあと――僕の視界には、【ステージ1】をクリアしたというメッセージが表示された――


 『ふっ――まずは第一ステージ、クリアおめでとう――』

 『なにが「第一ステージ、クリアおめでとう」だよ――小蒼ちゃん――』

 『仮想空間とはいえ――1人の命の灯火が消えた瞬間の光景を見た――だから殺めた西坂さんが許せなかった――』

 『だから僕は、【仮想の五感を持つ探偵】としての覚悟を決めて――西坂さんの【計算された犯行計画】を暴いた――』

 『それだけのことだ――』

 

 『ふっ――でも完全に解いたわけじゃない――』

 『【スポンジと皿の件】、あと邸内で【猫が泣いていた件】だろ?――』

 『――それも解決済みだよ――小蒼ちゃん』

 

 【妄想犯行計画】に僕がログインしている間は、【僕の五感】を通じて――【ほこやぎ町】の森咲 杜鷹として【ほこやぎ町の現実】として生きていく必要がある――

 1秒1秒が再現された仮想空間で、ほこやぎ町に住む住人は、NPCじゃない……

 金餅さんの飼い猫も一匹の猫として考える必要がある――

 

 昨日の夜――スポンジとお皿の件について僕は、ほこやぎ署で明堂さんに聞いた――

「スポンジと皿――?……ああ、あれはだな――」


 食室のオープンキッチンで――赤葉さんと僕が、回収したスポンジと匂いのついたお皿を実際に洗ったのは、北宮さんだった――

 北宮さんは――長年、金餅邸で働く【初老の家政婦】……というより、金餅さんの親戚だった――


「ホシは、普段から【やりっぱなし】が多かったみたいでな――」

「北宮さんの性格は、【几帳面で整理整頓好き】――赤葉とモリサキも見ただろ?」

「食室の綺麗に整理整頓されたオープンキッチンと食器棚を――!」

「俺たち警察が来る直前にオープンキッチンに放置された皿に気づいて――」

「北宮さんも嗚咽を我慢しながら洗ったと本人が言っていたよ」

 ――通りで、北宮さんの指紋と西坂さんの指紋がお皿に残るわけだよ……


「それとな……金餅さんの飼い猫――北宮さんの話によると焼いた干物が好物だそうだ――」

「――いつもは北宮さんが東絵さんが、あまり匂いしない干物を焼いて、皿に乗せておくと【飼い猫】が食べるそうだ――」

 

 ――いくら干物を食べる【飼い猫】だからって、【臭い干物】まで食べちゃうのか――すごいな……

 

「オレが最初にオープンキッチン、見たときよ――」

「カミさんも見習って欲しいと思ってしまったわけだ!」

「……言葉にしたら、カミさんに殺めらてしまうがな――」

 ――明堂さん……返事に困りますよ……

 

 そう――全ては僕の見えないところで、【1秒1秒】動いていたのだ――

 それがトリックモノと推理モノの【フィクション】の世界と【仮想空間 妄想犯行計画】の違いだ――


 『――というわけさ、分かったかい――小蒼ちゃん』

 『ふっ――さすがだね、杜鷹』

 

 『事件も解決させたことだし――【ログアウト】する?』

 『――ここで【ログアウト】するのはまずい……萬屋記録局の僕の部屋で、【ログアウト】する――』

 『ふっ――そうわかった、またあとで――杜鷹』

 ――拠点で【ログアウト】は基本だよ、小蒼ちゃん。


「モリタカ――!帰るよ――!」

「はい――!赤葉さん!」


 こうして赤葉さんと僕は、【匂いの妄想犯行】の舞台である金餅邸を後にしたのだった――


 #13 匂いのトリック解決篇 Part.3 完

 #14 匂いのトリック 閉幕篇につづく。

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