#11 匂いのトリック 解決篇 Part 1
【妄想犯行計画】は、
創作世界の物語です。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体、事件、出来事とは一切関係なく、すべて架空の世界の出来事と事件です。
妄想犯行計画 未来を掴む推理ゲーム
#11 匂いのトリック 解決篇 Part 1
【202X1月X日 AM10:00】
【
【残解決時間141時間】
「家政婦の【――――】さん、あなたが金餅さんを殺めた犯人だ!」
「はぁ?いきなりなんなの!?私が……金餅様を殺めた――証拠はあるの?!」
【Moritaka.(杜鷹さぁ)】
【Is there any basis for claiming this person is the culprit?(この人が犯人である推理と証拠あるの?】
「もちろんあります、これからお話しします」
――
探索篇の終盤。
初老の資産家で、匂いの特異体質を持つ
萬屋記録局長の
「警察でもないあんたが――そこまで言ってきたということは――」
「もし違ってたら、その時の覚悟は、当然できてるんでしょうね!」
「もちろんです!【――――】さん」
「聞かせてもらおうじゃない――!」
ここからは【
それでは聞いていただこう――
【202X 1月X日 PM20:00 】
【ほこやぎ町 萬屋記録局 】
【残解決時間 155時間】
事件の場である金餅邸は、安全面を考慮して立ち入り禁止となっており――赤葉さんたちと僕は、事件についての情報を共有するため――今、萬屋記録局にいる――
「――モリタカくんは、金餅邸の家政婦の初老の家政婦さんの北宮さん――君と赤葉がすれ違った2人の家政婦――東絵さんか西坂さん」
「3人の家政婦さんの中に、金餅さんを殺めた犯人がいるというの?」
「モリタカくん――我々、警察は――確たる証拠がなければ、殺めた人間を逮捕することはできないわ」
「その意味と覚悟を理解した上で、キミは私たちに話をする――」
「――という認識で、いいのかしら?」
そう――これは決してゲームなんかじゃない。
現実世界では――ただの普通のサラリーマンである僕が、想いを叶える存在【刻想器】だった――小蒼ちゃんと、ハッピーエンドの未来を掴むため、【想いの契約】をした――僕の想いを具現化したもう一つの現実。
それが、【仮想空間 妄想犯行計画 ほこやぎ町】。
ただ、普通のVRゲームと違うのは――
この世界が――【萬屋 赤葉の事件帳】の【ほこなぎ町】を再構築した世界であるということ。
ほこやぎ町の住人――森咲 杜鷹として、五感を再現された状態で――生きている。
犯人を間違えることなど、絶対にあってはならない。
ましてや――ただの一般人の僕が、推理を間違えたら警察組織の信用問題に繋がってしまう。
だから八色さんは、覚悟の問いを僕にしているのだ――
「八色さん……僕は――どんな理由があっても人を殺めることはあってはいけない――だからこそ……完璧な犯行と見せかけて、金餅さんを殺めた犯人を――僕は許せない!」
「金餅さんを殺めた犯人は、僕が暴きます!」
人を殺めることはどんな理由があれ、あってはならない。
例えそれが、仮想の現実の住人だとしても……
殺めるという選択をした時点で、罪を暴かれる未来は犯人自身が選択した結果なのだ――
だから僕、森咲 杜鷹は――犯人を暴く。
「……なるほどね、キミの覚悟は分かった」
「私もキミと同じ考え――一人の警察官として、一人の人間として――」
「だから君の推理――聞かせてくれる、モリタカ君」
「はい、分かりました――まず――」
僕の視界に写る現在時刻の下に表示されていた――帽子を被り虫眼鏡を持ったアイコンが、帽子を被った吹き出しがついたマークに変わった。
つまり今から探索パートではなく、推理パートに変わったということだろう。
――分かりやすくて助かるよ――小蒼ちゃん。
八色さんたちに僕が――推理を説明する方法。
それは、八色さんたちからの問いに僕が答える方式であった――
これは【萬屋 赤葉の事件帳】の作品内でも、明堂さんか八色さんが――必ず赤葉さんに質問して、赤葉さんが推理を答えるのと同じ。
この世界における赤葉さんの役割は、僕ということだ――
だからこそ、間違いは絶対に許されない……セーブとロードがない――やり直しが一切できないこの状況、緊張感で余計に僕の手が震える……
まずは、赤葉さんの質問から始まった。
最初の赤葉さんの質問は、邸内に入った際に僕が感じた【残り香】についての質問だった――
「今日の朝――私とモリタカが、家政婦さんに案内されて邸内に入った時、匂いがどうとか言ってなかった?」
「はい、それは――」
あの時、僕が嗅いだ匂いは――ほんのりと残る魚の生臭い匂い。
【残り香】だと僕が思ったのは、すぐに匂いが消えたからだ。
「残り香か……ていうかさ――なんでそんな大事なことを先に言わないわけ?」
「赤葉さんは、先に進んで行ってしまったので…………」
「……たく、悪かったわね――でも次からはちゃんと情報は共有すること――分かった?」
「はい――分かりました、赤葉さん」
――正直に『嗅覚が無いかと思いました!』なんて言葉――赤葉さん達には、口が裂けて言えないよ。
次に僕に質問をしてきたのは、明堂警部だった。
「モリサキ――確かにホシは特異体質持ちだったよ――」
「金餅さんの命の灯火が消えた推定時刻は、今日の【朝9時過ぎ】――灯火が消えた原因は、金餅さんの特異体質によるものだ――」
「ホシの今日の出勤時刻は、命の灯火が消える時刻の1時間前の午前8時」
「自分以外の家政婦さんがいる状況の中でホシが、トリックを行う時間はない――金餅さんをホシが殺めることはできんぞ」
「だから【――――】さんは、自分の特異体質と【K.S換気システム】を利用して時間差トリックを利用して、金餅さんを殺めたんです――」
そう、このトリックは時間差トリックだ――
K.Nさんが前日の20:30に管理者権限でログインした際に残されたログを僕が見た際に、僕は仮想空間内のコントローラーの役割を持つ白いスマホで――後から見返すことができるように、換気設定の画面を写真で撮影していた。
書斎室で金餅さんの命の灯火消えた時間のK.S換気システムの設定は――
キッチンは【吸気】、書斎室と外部は【排気】、それ以外の部屋と廊下は【換気】に設定されていたのだ――
匂いの特異体質を持つ金餅さんが、【換気】ではなく【吸気】という設定をするだろうか?
しかも書斎室のみ【排気】から【換気】に1時間後に自動的に切り替わる追加設定もされていた――
つまり赤葉さんと僕が、邸内に入ったタイミングと【換気】に切り替わったタイミングは同じだったのだと考えた場合。
僕が嗅いだ、【すぐに消えた残り香】の匂いは、換気システムによって外に排気された匂いの可能性が高い――
「モリタカ君――さすがね」
「あの換気システムのログからそこまで考えるとはね……でもそれだけではダメ、君なら分かるわよね?」
「はい、八色さん……確たる証拠ですね――」
そう確たる証拠、物的な確たる証拠がなければ、このトリックは成立しない――
プルル!プルル!プルル!
「――こちら明堂……なんだって?……そうか分かった……」
「モリサキ、おまえの読み――当たってるかもだぞ」
「あんな臭い干物、家政婦が焼くなよ……」
そう【――――】さんが、トリックで使ったモノ。
魚の干物だ!
#11 匂いのトリック 解決篇Part.1 完
#12 匂いのトリック 解決篇Part.2につづく。
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