第二十章 ― 大規模破壊
すべての通信網が突如として途絶した。
砂嵐と雑音の中に、リュウの顔が浮かび上がる。
> 「最終決戦だ。首都都市(キャピタル・シティ)――夜明けに。」
それは挑戦状であり、同時に死刑宣告でもあった。
政府は即座に緊急命令を下す。
全面避難。
数百万の民が恐怖の中で逃げ出し、
幹線道路は車で詰まり、サイレンが鳴り響き、
ヘリコプターが空を横切る。
夜明け前にして――国家の心臓は、亡霊と化した。
カズキは無線を通じて叫ぶ。
> 「戦うなら海上でやれ! 市街を巻き込むな!」
だがリュウの笑いが返る。歪み、狂気を帯びた声。
> 「臆病者め……お前はいつだって“安全”を選んできた。」
挑発は、狙い通りに刺さった。
カズキは怒りに飲まれ、承諾してしまう――
それが、最大の過ちだった。
---
夜明け。
空は赤と灰に燃え、まるで太陽そのものが血を流しているようだった。
カズキは静まり返った摩天楼の上を飛ぶ。
人影のない街。
ガラス窓には崩壊の光景が映り込む。
レーダーが警告音を発した瞬間、
太陽の方向から――リュウが急降下。
電撃のような攻撃。
《ブルータル・ループ》。
カズキは紙一重で回避。
ミサイルは逸れ、隣のビルに直撃。
塔が爆ぜ、鉄と炎の雨が降り注いだ。
都市戦闘の幕が開く。
ビルの谷間を抜け、橋の下をくぐり、
崩壊した大通りをすり抜ける。
戦闘機が超音速で街を駆け抜け、
鋼鉄とコンクリートが交錯する死の舞踏。
衝撃波で窓ガラスが割れ、
建物が揺れ、大地が怯えるように震える。
カズキは《ギロ・ブルータル》でミサイルを回避。
爆炎が廃病院を包み、建物は内側へと崩れ落ちた。
彼は《デス・スラッシュ(死の斬撃)》を発動。
リュウをかすめた刃は、代わりに高層タワーを真っ二つに裂いた。
巨塔はゆっくりと傾き、街区を押し潰していく。
> 「……落ち着け、カズキ!」
彼は自分に向かって叫ぶ。
だがその瞬間、戦の神が部分的に制御を奪った。
天空が裂け、《混沌の流星雨(メテオ・ストーム・オブ・カオス)》が降り注ぐ。
燃え盛る破片が街を焼き尽くし、
通りは火の海となった。
リュウもまた悪魔の怒りを解き放つ。
《空の奈落(アビス・エア)》――
空中に現れた黒い門が、無秩序にエネルギーを吐き出す。
スタジアムが消え、
橋が真っ二つに裂け、
公園が巨大な火口へと変わる。
カズキは一瞬だけ意識を取り戻した。
そして、目前の光景に凍りつく。
> 「やめろッ! この街は――俺たちの故郷だ!」
しかし戦の神には届かず。
リュウもまた、《死の魔神》に完全に飲み込まれていた。
二柱の神が怒りをぶつけ合う。
人としての理性は、すでに瓦礫の下に埋もれていた。
逸れた一撃が貯水ダムを直撃。
数秒で決壊。
濁流が郊外を呑み込み、
空港が炎上し、
国立博物館――数百年の記憶と芸術が――
一発の爆撃で消え去った。
カズキは叫ぶ。
だがその声は、雷鳴と爆音にかき消された。
涙が汗と血に混ざる。
操縦桿を握りながら、
彼は自分が災厄の一部であることを理解していた。
かつて国家の誇りだった首都は、
今や燃える瓦礫の山。
数百万の避難民。
歴史は消え、経済は崩壊した。
すべては――
二人の兄弟が、赦しを学べなかったせいで。
炎の渦の中、
一瞬だけ、二人の視線が交わる。
壊れた雲の間で、互いの痛みを悟る。
その刹那、
罪悪感が、失われた人間性の最後の火花を灯した。
そして――静寂の中、
再び、地獄が咆哮を上げた。
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