第6話 仮面様
入学式から3週間が過ぎ
高校生活と言う物に慣れ始め同級生ともある程度距離が縮まって
会話も増えた。
時々仮面越しに、同級生のバイトやクラブ、私生活や授業、テストの愚痴が
見えるもこの心が見える生活にも慣れ始め
僕はと言うと、クラブには入らずそろそろバイトを始めようかと迷っていた。
何よりも休み時間や登下校で竜馬君と滝本さんと帰る時間が、日々の幸せで、今一番の楽しみだった。
僕は2人といる時は、なるべく仮面を付けず素の自分でいるようにしていた。
時々滝本さんは、学校を休んだり保健室に通ったり、
相変わらず仮面を外さない滝本さんだったが、
深入りはせずただ一緒にいれる時間を大切にした。
そんなある日の登下校の事だった。
今学校でも皆がそわそわしている事がもうすぐ始まる。
そう、GW《ゴールデンウィーク》だ。
僕らもその話で盛り上がっていた。
「もうすぐ|GWだけどきっくん予定あるの??」
「うーん。今のところ予定ないしバイトでも始めよっかなって考えてる・・・。」
「頑張るねー!高校生活初めてのGWだしパッとやりなよ!」
「・・・そうだねー。でもお金も稼がなきゃだし、あとは、これと言って予定ないしなー・・・。」
すると滝本さんが、とある提案をしてきた。
「そうだ。菊野君って私たちの地元って来た事あるんだっけ?」
「えっ?日河かー。そう言えば小学校以来行ってないな・・・。」
「お!そうなの?じゃあ遊びに来いよ!」
「そうだよ。是非遊びに来て。って言っても何もないけど・・・。」
日河・・・か。
確かにこの年齢で日河に行く用事なんてないけど。
今は、この2人がいる。それに、休みの日に2人に会った事ないから
少しワクワクした。
「え、じゃぁ行こうかな!」
「本当?じゃあオススメスポット探さなきゃね。」
「おぉ!きっくん来るならそうだな!探さなきゃな!!」
なんだか嬉しそうな二人の姿を見ていると、僕まで嬉しくなる。
GWが楽しみになってきた。
「そういえば8月には、白流神社で仮面祭ってのがあるんだよね?」
その話題を振ると、二人は立ち止まり顔を見合わせる。
「あ、あぁ!仮面祭あるな!え?行きたい??」
「うん!折角なら行ってみたい!!」
「・・・そ、そうか。なら3人で行こう!な!紗季。」
滝本は戸惑いながらも、小さく頷く。
なんだか少しだけ申し訳ない気持ちになったけどGWも夏休みも彼らと
会える約束が出来た事が何より嬉しくなった。
そうこうしている内に、駅に辿り着き二人を見送る。
その時だった。後ろから見慣れない同じ制服で髪がボサボサで、猫背の生徒が、僕を追い越し竜馬に話しかけ始めた。
「よぉ、最近なんだか楽しそうだね!」
その人物に対し、竜馬君は、おぉ!と驚きながら返答している。
「おっくん!久々じゃん!!今帰り?」
3人は、話しながら改札へ向かっていく。
その姿を見てとりあえず僕は、
「じゃあまた明日!学校で!」と大声で叫び
手を振る僕に、二人も手を振り改札口を抜けていく。
そういえば最近は、2人との時間やバイトであまり考えないようにしてたけど。
仮面祭ってどんな事するのだろう?
屋台とか出るのかな?
なんて呑気に考えながら、携帯をズボンのポケットから取り出し
カレンダーを見て、予定を確認する。
8月8日。
そう言えば、兄ちゃんからのメッセージは未だに届いていない。
兄ちゃんも忙しいのかな。
にしても、一本位連絡をくれてもいいのに・・・。
駅を後に、自宅へ戻ろうとした時だった。
「・・・圭一?」
改札口の方から僕の名前を呼ぶ、聞き慣れた声が聞こえて振り返った。
そこには、少し大人びたスーツ姿の素顔の
「兄ちゃん!?」
「おぉ!やっぱり圭一だよな!久しぶり!」
「久しぶりじゃないよ!連絡もくれずに・・・。」
少し拗ねる僕の反応を見て、戸惑う兄ちゃんが、ごめんごめんと何度も謝ってきた。
「ちょっと忙しくてな。背も伸びたな!それに少し大人っぽくなったじゃんか。」
「・・・兄ちゃんも、スーツ似合ってるよ。」
その一言に少し恥ずかしそうに頭を掻く兄ちゃん。
「ありがと。母さんも父さんも元気か?」
「うん!元気だよ!きっと母さんも父さんも喜ぶと思うよ!早く帰ろ!」
すると兄ちゃんは、またごめんと頭を下げ「ちょっと寄るとこあるから先に帰っててくれ。」と一言添えて駅から離れようとする。
「え?寄るところって?帰ってくるんだよね??」
「あぁ!帰るよ!俺も父さん母さんに会いたいしな!」
そう言う兄ちゃんに本音も言えず、ただ見送る事しか出来なかった。
少し歩くと兄ちゃんは立ち止まり振り向き僕の様子を伺う。
「そう言えば圭一、仮面はつけてないのか?」
「え・・・あぁ!鞄に入ってるよ!」
「・・・そっか。仮面付けてて不便なことないか?」
「不便・・・。まぁ食事や体育の時に付け外ししたりするのが不便なくらいかなー。」
「そうか。まぁ大切にしろよ。」
そう言って、兄ちゃんはまた何処かへ向かって歩き始めた。
不便、大切にしろよ?
何気ない会話だったが、何処か違和感を感じた。
まぁでもそれよりも兄ちゃんが帰ってきた!早く帰って母さんに知らせなきゃ。
いつもの帰り道だったが、まるで兄ちゃんの帰りを祝福するかのように
華やかな帰り道に感じた。
歩くのが楽しいとさえ感じる。
早く家族揃って色んな話をしたい。
自宅へ戻り玄関を力強く開け母さんにすぐ報告した。
仕事終わりで疲れてソファーで休んでいた母さんだったが、兄ちゃんの帰宅を聞き
母さんも嬉しそうに、すぐさま携帯に手を伸ばし父にメッセージを送る。
そりゃそうだ。2年振りに家族が揃うのだ。
母さんも嬉しいに決まっている。
父からすぐにメッセージが返ってきたらしく父も早く仕事を終わらせて
帰るとのことで、母さんも料理に気合いを入れると言って冷蔵庫に入っている食材を見ながら鼻歌を口ずさんでいる。
そんな母さんの姿を見て僕も何か手伝うよっと言うと母さんは、「あら、珍しい」と
笑みを浮かべながら「じゃぁ・・・」と食材を切るのを手伝う事に。
今日の晩御飯は、兄ちゃんの大好物のカレーに決まったらしい。
カレーを作りながら、兄ちゃんとどんな話をしようと考えるのが楽しかった。
そんな僕の表情を見て母さんも何処か嬉しそうだった。
ルウを入れて煮込んでいる間に、父が大急ぎで帰ってきた。
今まで見た事ない程嬉しそうな父。
兄ちゃんいつ帰ってくるんだろう楽しみだな。っと思いながらテーブルを片付け
食器の用意をした。
それから2時間程たった19時過ぎ。
カレーもサラダも出来ていて、いつでも晩御飯を始めれる準備は、出来ているが
一向に兄ちゃんが帰ってくる様子も、連絡もない。
久々の家族団欒で、ご飯を食べたいが流石におなかが空いた。
母さんも、僕に「本当にお兄ちゃんだったのよね?」と聞いてくる。
「本当だよ!少しだけだけどちゃんと話したし。あれは間違いなく兄ちゃんだったよ!!」
そう言うと母も困ったな、と言う表情で重たい空気が流れていた。
暫くの沈黙が続くと父が「あいつも忙しいんだろ。寄るところあるって言ってたんだろ?きっと友達に会いに行ったりしててまだ帰れないんだろ。仕方ない父さんもお腹空いたし食べよう!」と言って父は、台所に行き3人分のカレーとサラダを用意して
テーブルに運ぶ。
その姿をみて母さんも「そ、そうね!2年振りの地元だし。早とちりしちゃったわね!食べよ食べよ!」と父を手伝う。
確かに早とちりだったかもしれない。
何時に帰ってくるも、今日帰ってくるも聞いてないし。
目の前に出されたカレーを一口食べるも、
美味しいはずのカレーの味はしなかった。
ご飯を食べ終え、自室へ戻りベッドに横たわる。
ここ最近で一番の脱力感を感じる。
でも帰ってくるはず。
そう信じて携帯を確認するも、メッセージは届いていない。
深く溜息をつきSNSを確認する。
同級生が、クラブでの出来事や活動やGWどこ行きたいなどとをSNSに載せている。
気を紛らわそうと画面を上下にスクロールして何かないかと情報を更新してみる。
すると一番上に、何やら気になる記事が現れ確認する。
その記事に目を疑った。
思わずえっ?と声が漏れた。
そこに映し出された動画には、流れ星の様に降り注ぐ星が描かれた仮面を被った人物が映し出されていてタイトルは現世に仮面様が蘇った。
動画を確認すると、そこは見覚えのある景色。
そう竜馬君と滝本さんが暮らす日河町の白流神社が映し出されていて
夕暮れ時に、突如仮面を被った人物が現れ、そこに集まった何百の人々に加工された声で
「我は仮面の王。人々に仮面を普及した者の末裔で、この時代に再び仮面の意義を唱える為蘇った」と告げ、大衆は歓喜の声を上げ動画が終わる。
コメント欄を確認すると賛否のコメントで溢れている。
『仮面様って。そんなの存在する訳ないし馬鹿馬鹿しい』と言うものと
『100年の時を経て、仮面様が蘇ったのだ』と祝福するもの。
一体何が起きているんだ。
竜馬君も、滝本さんも大丈夫かな。
兎に角明日2人と、神崎先生に話を聞いてみる事にしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます