第40夜
建物の屋上からクロウと人間を見下ろす。
「クロウ、お前は気付いてねぇのかよ……」
彼の執心する人間から漂って来る……
『死の匂い』
近々、死ぬ事を物語っていた
死をねじ曲げる事は最大の禁忌である
悪魔である以上、クロウも弁えてる筈だ
だから執心する人間が死ねば、目が覚めると思った
もはや一緒にいる時間は、そんなに残されていない
せめて数日だけでも好きにさせる事が、リュウトにとっての情けだった
「だから人間は脆弱な生き物だって言ってんだろ……馬鹿クロウ」
歌から始まった2人の出会い。
言葉通り白羽は時間が許す限り、歌を聞きに訪れた
そして彼の姿を確認すると、クロウは心が温かく嬉しい気持ちになる
悪魔と人間……
狩る者と狩られる者だったとしても……2人の友情が深まるのに、そう時間は掛からなかった
元の艶のある声に1人の人間に初めて『情』が芽生えた事により、クロウの歌声が評判を呼んでいた
「増えたなギャラリー」
白羽はライブ後に、隣へと腰を降ろして来る
そしてクロウが最近ハマったばかりの炭酸飲料を手渡たした
喉を使った後に炭酸飲料は、どうなのかと白羽に言われたが……シュワッとした爽快感が堪らないのである
基本、悪魔は人間のような飲食物は口にしない
摂取出来ないワケではないものの、今までは口にしたいとも微塵も思わなかった
なのに今は、こうして自ら口にしてるのだから相当感化されているのだろう
「ああ……」
「なんだ、反応が薄いな」
正直、ギャラリーが増えようが減ろうが興味がない
隣にいる、たった1人が聞いてくれるなら他はどうでも良かった
「お前が聞いてくれるなら、ギャラリーなんか興味ない」
「ソレ……男の俺に言うセリフじゃないぞ」
「そうか?」
女であれば少なからずトキメいたかもしれないと、苦笑する白羽にクロウは首を傾げる。
何か、おかしな事を言っただろうか……
「まぁ、良いけど。じゃあ今日も俺の為に歌ってくれないか?」
「当然!お前も一緒にな」
白羽がイタズラっぽく笑って言えば、クロウも笑って承諾する
ストリートライブ後に2人で一緒に歌う事が、互いにとって何よりも代えがたい楽しい時間だった。
白羽の死が迫ってる事さえ気付かぬ程に……
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