第30夜
「…なければ…っ…全部、貴方さえいなければっ!私はっ!」
「え……」
悲鳴に近いような声で叫びながら彼女は、石段へと踏み出す白羽を背後から力一杯押して来たのだ……
グラリと傾く体……
石段から踏み外す足……
歪む視界……
そして次の瞬間には石段から、転げ落ちる
自らの都合で女性を利用して来たツケが回って来たのか。
もしかしたら死ぬかもしれないと思った……
「ぐっ……あ……って…ぇ…っ」
下段まで転げ落ち、体が激しく打ち付けられた
どうやら死ぬ事はなかったが、身体中に激痛が走る…
うっすらと目蓋を押し上げるものの、自ら流した血液のせいで視界が霞む
直後、バタバタと慌ただしい足音が駆け抜けて行った
ぼやける視界の中でも、突き落とした当人だと予想がつく
「くそ…っ…危ない…女め…っ」
息も切れ切れにポツリと呟いた
そのような女に好かれた陽斗も、とんだ災難である
さて、これからどうしようと……ぼんやりと考える
この状態では自力で動けそうもなかった……
日が落ちた公園に人の気配はなく、助けは期待出来ない
携帯を取り出す気力さえも残っていなかった
陽斗が見つけてくれるだろうか
「ねぇ、大丈夫?」
「っ……」
そんな絶望的な状況で、間近から声を掛けられる
気配を全く感じなかった
声からして、男だという事は窺える
まさに天の助けだと思った
「石段から…落ちて…助けて…くださ…い」
痛みに耐えながら、何とか状況を説明する
この状態を、一刻も早く何とかしたい……
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